【多様な視点持ち向き合う/フラットな関係築き考えを共有/東急設計コンサルタント 澁谷宗彦(しぶや・むねひこ)社長】
「どのような人が集まって、どのような過ごし方をするか、それをイメージできるかどうかが非常に大切だ」。東急設計コンサルタントの澁谷宗彦社長に設計者が持つべき視点を問うと、真っ先にこう答えた。建築はまちの成長の一翼を担う存在だからこそ、施設の完成を契機にまち全体がどのように成長し、バージョンアップしていくのか、ある意味で「デベロッパー的視点を持って設計することが必要だ」とその意図を説明。これは、立場の異なるさまざまな人の目線に立って建築に向き合うことを意味する。
成長し続ける施設を設計するためには、「関係者とフラットな関係を築くことが求められる。そうすれば、互いに考えを共有できるようになる。地元の人たちと一緒に開発するという気持ちを持つことも忘れてはならない」と強調。こうした姿勢で取り組めば、「施設を使う人だけでなく、そのまちに住んでいる人、さらにはまちを訪れる人にも喜んでもらえる施設になる」と思いを込める。
この考え方は、中期経営計画で策定したスローガン『生きる人が活きるまちを』にも通ずるところがあるとし、「『人に寄り添ったまちづくりをしたい』という社員の思いから生まれた言葉だ。まちづくりに向き合う企業としての姿勢を表している」とその背景を説明する。
最近は、まちづくりに向き合う企業ということが社会に浸透し始めており、東急グループ以外の鉄道事業者から「このエリアでどんなことができるかを考える勉強会に参加してもらいたい」という依頼もあるという。
多様な目線に立つことにこだわるのは、施設の修繕や大規模商業施設の開発・運営など、これまでさまざまな立場を経験してきたことが大きい。だからこそ社員には、「自分のチーム以外の人と交流すること」の重要性を発信する。
交流しやすい環境をつくるべく、2025年度からはフリーアドレス制を導入したり、各部門がどのような仕事をしているか可視化したりと、社内環境改革に取り組んでいる。早速その効果が表れてきており、「社員が他部署のメンバーと会話する姿が見られるようになってきた。気軽に相談し合えるような環境ができてきている」と手応えを語る。
「施設用途の境目がなくなってきている」という現在、自分とは異なる用途を担当するメンバーとの交流はこれまで以上に重要で、これにより「気付きが生まれ、より良い建築が生まれる」と見る。さらに、現在は環境問題や人口減少のみならず、「まちごとにさまざまな課題がある」からこそ、「幅広い視点を持っていなければ、まちの課題の深層をつかむことはできない」とも。
完成後、定期的に施設を訪れる重要性も説く。実際に足を運ぶことで、「まちを育てていくために何ができるか考えることにつながる」とし、リノベーションといった“完成後の仕事”も見据える。「完成した施設の利用状況に次への開発のヒントがある」を合言葉に、今後も建築とまちづくりを追求していく。
【業績メモ】
昨年度は創業以来過去最高の受注額を確保。今年度も「順調に推移している」といい、特に宿泊、鉄道施設、住宅用途が好調で、複合用途建築も堅調に推移している。コロナ禍が明けて以降、鉄道会社の投資が活発化しており、連続立体交差事業など、土木設計も安定的に受注を続けている。東急グループ外の受注も倍増し、グループ外比率が約7割に達している。
急激な変化のまっただ中にある今、求められている建築、まちの在り方とは何なのか。大手設計事務所のトップに建築やまちとの向き合い方を聞いた。本日から各社社長のインタビューを連載します。
「どのような人が集まって、どのような過ごし方をするか、それをイメージできるかどうかが非常に大切だ」。東急設計コンサルタントの澁谷宗彦社長に設計者が持つべき視点を問うと、真っ先にこう答えた。建築はまちの成長の一翼を担う存在だからこそ、施設の完成を契機にまち全体がどのように成長し、バージョンアップしていくのか、ある意味で「デベロッパー的視点を持って設計することが必要だ」とその意図を説明。これは、立場の異なるさまざまな人の目線に立って建築に向き合うことを意味する。
成長し続ける施設を設計するためには、「関係者とフラットな関係を築くことが求められる。そうすれば、互いに考えを共有できるようになる。地元の人たちと一緒に開発するという気持ちを持つことも忘れてはならない」と強調。こうした姿勢で取り組めば、「施設を使う人だけでなく、そのまちに住んでいる人、さらにはまちを訪れる人にも喜んでもらえる施設になる」と思いを込める。
この考え方は、中期経営計画で策定したスローガン『生きる人が活きるまちを』にも通ずるところがあるとし、「『人に寄り添ったまちづくりをしたい』という社員の思いから生まれた言葉だ。まちづくりに向き合う企業としての姿勢を表している」とその背景を説明する。
最近は、まちづくりに向き合う企業ということが社会に浸透し始めており、東急グループ以外の鉄道事業者から「このエリアでどんなことができるかを考える勉強会に参加してもらいたい」という依頼もあるという。
多様な目線に立つことにこだわるのは、施設の修繕や大規模商業施設の開発・運営など、これまでさまざまな立場を経験してきたことが大きい。だからこそ社員には、「自分のチーム以外の人と交流すること」の重要性を発信する。
交流しやすい環境をつくるべく、2025年度からはフリーアドレス制を導入したり、各部門がどのような仕事をしているか可視化したりと、社内環境改革に取り組んでいる。早速その効果が表れてきており、「社員が他部署のメンバーと会話する姿が見られるようになってきた。気軽に相談し合えるような環境ができてきている」と手応えを語る。
「施設用途の境目がなくなってきている」という現在、自分とは異なる用途を担当するメンバーとの交流はこれまで以上に重要で、これにより「気付きが生まれ、より良い建築が生まれる」と見る。さらに、現在は環境問題や人口減少のみならず、「まちごとにさまざまな課題がある」からこそ、「幅広い視点を持っていなければ、まちの課題の深層をつかむことはできない」とも。
完成後、定期的に施設を訪れる重要性も説く。実際に足を運ぶことで、「まちを育てていくために何ができるか考えることにつながる」とし、リノベーションといった“完成後の仕事”も見据える。「完成した施設の利用状況に次への開発のヒントがある」を合言葉に、今後も建築とまちづくりを追求していく。
【業績メモ】
昨年度は創業以来過去最高の受注額を確保。今年度も「順調に推移している」といい、特に宿泊、鉄道施設、住宅用途が好調で、複合用途建築も堅調に推移している。コロナ禍が明けて以降、鉄道会社の投資が活発化しており、連続立体交差事業など、土木設計も安定的に受注を続けている。東急グループ外の受注も倍増し、グループ外比率が約7割に達している。
急激な変化のまっただ中にある今、求められている建築、まちの在り方とは何なのか。大手設計事務所のトップに建築やまちとの向き合い方を聞いた。本日から各社社長のインタビューを連載します。