清水建設ら開発/盛土情報を一元管理/3Dモデルに施工履歴蓄積 | 建設通信新聞Digital

9月17日 水曜日

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清水建設ら開発/盛土情報を一元管理/3Dモデルに施工履歴蓄積

重岡工事長(左)と平田氏
エスセルの画面
 清水建設は、EARTHBRAIN(東京都港区)と共同で、盛り土の3次元モデルとひも付け、工事のプロセスをデータとして自動で蓄積・整理する盛り土・トレーサビリティー管理システム「Shimz Smart Earthwork Logs(SSEL=エスセル)」を開発した。いつ、どこで、誰がどのように土構造物をつくったかなどを追跡するトレーサビリティーを一元管理できる。施工や維持管理のデータ確認の作業効率も飛躍的に向上する。
 エスセルは、土質試験やトレーサビリティーデータ結果の入力システム、市販のIoT(モノのインターネット)デバイスを搭載した土砂積み込み建機と運搬車両、市販のICTブルドーザーと転圧ローラー、クラウドを経由し送信されるトレーサビリティーデータを一元管理するデジタルプラットフォームで構成する。
 システム内では、土砂の積み込み場から盛り土場までの材料や運搬経路、荷降ろし位置、敷き均し位置、転圧位置を把握・記録する。盛り土場は3次元モデルで再現しており、縦5m、横5m、高さ0.3mの地形を箱形に置換した「ボクセル」に施工履歴データを格納する。ボクセル内には土質材料や層番号、施工日時、転圧機械、巻き出し圧、転圧回数、密度比、含水比、空気間隙(かんげき)率、材料試験結果などの情報が入る。
 EARTHBRAINコト価値開発デザイングループの平田柊作氏は「既存の技術やシステムを組み合わせることにより、専用ソフトや高性能なパソコンを必要としないこともメリット」と説く。盛り土工事の全ての状況や段階も一元管理できる。土質試験や試験施工などの事前試験から積み込み場、土砂運搬、敷き均し、転圧までの施工履歴データを自動的に集計できる。品質書類の削減・デジタル化、リアルタイムな情報共有、災害時などのスピーディーな情報確認が可能となる。清水建設の試算によると、1日当たり8万5000円、運用期間21カ月では、3927万円の費用削減を見込む。
 2021年に静岡県熱海市で発生した盛り土崩壊、土石流災害により、23年に盛土規制法が改正された。盛り土工事の各段階をデータでたどることが可能なトレーサビリティー管理が求められるようになった。搬出側の土質試験結果や土砂の積み込み建機、積み込み位置、日時、受け入れ側の運搬車両、日時、荷降ろし位置、敷き均し建機、範囲、転圧建機、回数などデータが多い。
 現行のトレーサビリティー管理は、書類で管理しており、週報・月報・完了時の報告書があり、作成の負担が大きかった。書類の確認頻度が高い一方、検索に時間もかかっていた。必要なデータを自動取得し、3次元モデルとひも付け蓄積・整理できるエスセルを開発した。
 同社が大阪府高槻市で施工している「新名神高速道路梶原トンネル工事」で12月から埋め土工事で実証を始め、26年10月から28年1月まで本格的に運用する見込み。ほかの現場に水平展開したい考えで、システム開発に携わった清水建設の重岡知之工事長は「将来的に業界全体に広がれることを期待している。NEXCOでの標準化も目指したい」と意欲を示す。