クローズアップ・全国中小建設業協会会長 河崎茂氏に聞く | 建設通信新聞Digital

10月22日 水曜日

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クローズアップ・全国中小建設業協会会長 河崎茂氏に聞く

【落札率上昇へ要望継続/中小零細の実態伝える】
 ここ数年、首相や国土交通相をはじめとする政府側と建設業界の代表が、技能労働者の処遇改善などをテーマに意見を交わす場が定期的に設けられている。そこに出席する主要建設業4団体の一角として、全国中小建設業協会の存在感がかつてないほどに高まっている。建設業界と一口に言っても、企業規模や業種・工種はさまざま。地域に密着して市民生活を支える中小零細の地場建設企業には今、何が求められているのか。6月にトップに就任した河崎茂会長に聞いた。 「地域に貢献する力強い地場産業」を旗印に、公共事業予算の長期・安定的な確保と地域建設業者の受注機会確保、地域の防災・減災と復旧・復興への対応、新しい4K(給与・休暇・希望・かっこいい)を目指した職場環境の整備などに向けた活動を展開する全中建。
 中でも、「30年来の付き合いである土志田領司前会長を先頭に、これまで訴え続けてきた入札制度の改善は、今後も強く働き掛けていきたい」と自身にとっての“一丁目一番地”のテーマを明かす。
 確かに、直轄工事や都道府県発注工事は制度改善が進んできたが、「全中建の会員企業で直轄工事を受注するところは非常に少ない。われわれは市町村発注工事を主戦場としているが、全国を見渡すと、いまだに低入札価格調査制度や最低制限価格制度が適切に運用されておらず、仕事を確保するため、予定価格の半値以下での受注を余儀なくされる自治体もある」と窮状を訴える。
 そして、「設計労務単価を継続的に引き上げてもらっているのは大変ありがたいが、このような受注環境では、従業員の賃上げは非常に厳しいというのが本音だ。少し前までは予定価格の95%以上で落札できるようにと主張してきたが、今はさらに踏み込み、予定価格に限りなく近い価格で落札可能な環境整備を呼び掛けている。国には、首長を含めて市町村への指導を徹底してもらいたい」と話す。「協定などに基づき、災害時に最前線で地域のために活動する協会会員企業を入札でもっと優遇してほしい」とも。
 同時に、「慣例にとらわれない新しい発想での労務単価の設定」も提案していく考えだ。その背景には、「われわれが手掛ける工事は、前提とする1日8時間稼働ができないものが多い」ことなどがある。「例えば、生活道路の補修工事。現場は日々変わるし、施工時間にも制限がある。加えて、今夏のような酷暑では、日陰もないばかりか、舗装の強烈な照り返しも重なり、作業時間がかなり削られる」と建設現場の多様性を指摘する。
 若い担い手の確保・定着の観点からも欠かせない週休2日の取り組みについては、「実際のところ、われわれの領域では完全土日閉所は難しいだろう。トータルでの週休2日が現実的だが、そもそも市町村ではいまだに、週休2日制モデル工事が少ないことが問題だ」と語る。
 政府・与党に対する予算要望も協会活動の主軸の一つ。2026年度からスタートする第1次国土強靱化実施中期計画には「大いに期待しており、市町村発注工事でも事業量の増加を実感できるようになればと思っている。ほかの業界団体とも歩調を合わせつつ、全中建としてしっかりと要望していきたい」と意気込む。
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 (かわさき・しげる)1976年3月日大生産工学部土木工学科卒後、同年4月河崎組建設業入社。80年4月常務、82年4月取締役副社長、96年4月から代表取締役。全中建では理事、常任理事を経て、2019年から6年間にわたり副会長を務め、25年6月から会長。神奈川県中小建設業協会では、11年から21年までの10年間会長を務め、現在は常任相談役。趣味はゴルフ。神奈川県出身、72歳。