【枠組みは整備 その先は/委ねられた専門工事業の覚悟】
「腹をくくって、払うためにもらわなければならない」。全国鉄筋工事業協会の國井均常務理事は、1月28日に開かれた東京都鉄筋業協同組合の『改正建設業法の運用(標準労務費とは)』と題した勉強会で、昨年12月12日に全面施行となった改正建設業法を受け、鉄筋工事業が対応しなければならないことを解説し、冒頭の言葉を終わりの言葉に代えた。技能者の処遇改善に向け、建設産業界を挙げて取り組もうと期待が先行している今、なぜ「腹をくくる」という表現をしたのか。 昨年12月2日、中央建設業審議会が「労務費に関する基準(標準労務費)」を勧告したことを受け、同月12日に改正建設業法と改正公共工事入札契約適正化法が全面施行され、標準労務費を軸とした新ルールが始まった。
新ルールは、適正な労務費の相場観を国土交通省が今後毎年公表し、その労務費を最終的に技能者の賃金とすることで他産業との担い手確保競争に臨み、持続可能な建設業を目指すもの。そのために価格(建設業法19条の3)、工期(同19条の5)の両面で、ダンピングといわれる過度な安値、著しく短い工期による受注の禁止を建設業に課した。
國井氏は工期ダンピングについて、受注目的で現実的ではない1人当たりの施工量を基にした見積もりによる契約締結は「工期ダンピングに当たる」として、その理由についても解説した。
さらに國井氏が最も強調したのは、建設業法第20条(建設工事の見積もりなど)だ。新ルールの肝の一つが労務費などを内訳明示した見積書であることを踏まえ、新たに20条で明記された「適正な施工を確保するために不可欠な経費」について、國井氏は「不可欠な経費とは『材料費』『労務費』『法定福利費』『建設業退職金共済制度(建退共)掛金』『安全衛生にかかる経費』『そのほかの直接経費』の6項目。いわゆる直接経費であり、製造原価だ」と説いた。
しかし、この説明には続きがある。そしてこの続きの部分が冒頭の「腹をくくる」ことにつながっている。
具体的には「これら(不可欠な経費の6項目)以外に事務経費、減価償却費などの固定費を一般管理費として(見積もりに)計上する必要がある」と指摘。これまでコストを詳細に分解することは、材工一式契約が一般的だったことを理由にあえてしてこなかった専門工事業界は、長年にわたって元下間で商習慣だった見積もりの材工一式的発想の中で、繁閑調整を重層下請け構造に頼ってきた。
しかし今後、新ルールの中で適正な労務費を支払うためのエビデンス(証拠)を求めざるを得ない発注者・注文者に対し、重層構造で成り立つ専門工事業は、法律に沿った見積もりの作成・提出が、適正労務費だけでなく自社と外注先企業の経営を維持するための一般管理費確保につながる期待も生まれる。
勉強会で國井氏は、既に国交省が公表した「鉄筋工事の労務費基準」をベースに、「雇用に必要な経費41%」を加算した金額、さらに自社が存続するために必要な一般管理費を一定割合加算した積み上げ額を試算。その上で、「受注競争の勝負は一般管理費部分。ただ外注先の技能者に賃金がもし上がらないなどの問題があれば建設Gメンに通報される」と警鐘を鳴らした。
技能者の賃金を含めた処遇改善に必要不可欠だとして、大きく踏み込んだ「詳細な内訳明示の見積書」が今後、建設業界に浸透した場合、これまでの繁閑調整の役割を担ってきた重層構造が受注競争で重荷になりかねない。
持続可能な建設業の実現へ2度にわたる担い手3法改正を経て、標準労務費という新たな枠組みが整備された。この枠組みにどう対応していくか、今後は建設業界の取り組みが問われている。
そして、企業の取り組みに覚悟が求められているということを、専門工事業界の中でいち早く新ルールに対応し始めた鉄筋工事業界が浮き彫りにしたとも言える。
「腹をくくって、払うためにもらわなければならない」。全国鉄筋工事業協会の國井均常務理事は、1月28日に開かれた東京都鉄筋業協同組合の『改正建設業法の運用(標準労務費とは)』と題した勉強会で、昨年12月12日に全面施行となった改正建設業法を受け、鉄筋工事業が対応しなければならないことを解説し、冒頭の言葉を終わりの言葉に代えた。技能者の処遇改善に向け、建設産業界を挙げて取り組もうと期待が先行している今、なぜ「腹をくくる」という表現をしたのか。 昨年12月2日、中央建設業審議会が「労務費に関する基準(標準労務費)」を勧告したことを受け、同月12日に改正建設業法と改正公共工事入札契約適正化法が全面施行され、標準労務費を軸とした新ルールが始まった。
新ルールは、適正な労務費の相場観を国土交通省が今後毎年公表し、その労務費を最終的に技能者の賃金とすることで他産業との担い手確保競争に臨み、持続可能な建設業を目指すもの。そのために価格(建設業法19条の3)、工期(同19条の5)の両面で、ダンピングといわれる過度な安値、著しく短い工期による受注の禁止を建設業に課した。
國井氏は工期ダンピングについて、受注目的で現実的ではない1人当たりの施工量を基にした見積もりによる契約締結は「工期ダンピングに当たる」として、その理由についても解説した。
さらに國井氏が最も強調したのは、建設業法第20条(建設工事の見積もりなど)だ。新ルールの肝の一つが労務費などを内訳明示した見積書であることを踏まえ、新たに20条で明記された「適正な施工を確保するために不可欠な経費」について、國井氏は「不可欠な経費とは『材料費』『労務費』『法定福利費』『建設業退職金共済制度(建退共)掛金』『安全衛生にかかる経費』『そのほかの直接経費』の6項目。いわゆる直接経費であり、製造原価だ」と説いた。
しかし、この説明には続きがある。そしてこの続きの部分が冒頭の「腹をくくる」ことにつながっている。
具体的には「これら(不可欠な経費の6項目)以外に事務経費、減価償却費などの固定費を一般管理費として(見積もりに)計上する必要がある」と指摘。これまでコストを詳細に分解することは、材工一式契約が一般的だったことを理由にあえてしてこなかった専門工事業界は、長年にわたって元下間で商習慣だった見積もりの材工一式的発想の中で、繁閑調整を重層下請け構造に頼ってきた。
しかし今後、新ルールの中で適正な労務費を支払うためのエビデンス(証拠)を求めざるを得ない発注者・注文者に対し、重層構造で成り立つ専門工事業は、法律に沿った見積もりの作成・提出が、適正労務費だけでなく自社と外注先企業の経営を維持するための一般管理費確保につながる期待も生まれる。
勉強会で國井氏は、既に国交省が公表した「鉄筋工事の労務費基準」をベースに、「雇用に必要な経費41%」を加算した金額、さらに自社が存続するために必要な一般管理費を一定割合加算した積み上げ額を試算。その上で、「受注競争の勝負は一般管理費部分。ただ外注先の技能者に賃金がもし上がらないなどの問題があれば建設Gメンに通報される」と警鐘を鳴らした。
技能者の賃金を含めた処遇改善に必要不可欠だとして、大きく踏み込んだ「詳細な内訳明示の見積書」が今後、建設業界に浸透した場合、これまでの繁閑調整の役割を担ってきた重層構造が受注競争で重荷になりかねない。
持続可能な建設業の実現へ2度にわたる担い手3法改正を経て、標準労務費という新たな枠組みが整備された。この枠組みにどう対応していくか、今後は建設業界の取り組みが問われている。
そして、企業の取り組みに覚悟が求められているということを、専門工事業界の中でいち早く新ルールに対応し始めた鉄筋工事業界が浮き彫りにしたとも言える。











