北海道大学と清水建設は、既設コンクリートに大気中のCO2を固定する技術「DAC(Direct Air Capture)コート」の実建物を対象とした初の試験施工を開始した。CO2吸収性能の高いアミン化合物をコンクリート表層に塗布し、大気中のCO2を内部に促進的に固定する技術で、供用中の構造物をCO2吸収体として活用する点が特徴。2030年頃の外販を目指す。
施工対象は品川区第三庁舎(東京都品川区)のコンクリート外壁で、施工面積は55平方メートル。塗布後のCO2固定量の経時変化を3年程度モニタリングし、実環境下での効果を検証する。
DACコートは、大気中のCO2を吸収するアミン化合物をコンクリートに含浸させることで、従来の2倍以上のCO2をコンクリート内部に固定できる技術。主材のアミン化合物には防食性能もあり、コンクリートの中性化に伴う鉄筋腐食を抑制し、鉄筋コンクリート構造物の長寿命化にも寄与する。
同技術は東京都が推進する「東京ベイeSGプロジェクト」の先行プロジェクトに採択されている。23年度からは、CO2データ分析システムを手掛けるゴーレム(東京都千代田区、野村大輔代表取締役)とともに、中央防波堤(東京都江東区)に設置したモックアップを用いた塗布効果の実証実験などを進めてきた。
製品化に向けた検討も化学メーカーと開始している。技術導入効果を可視化するシミュレーターも開発した。今回の試験施工は東京都と品川区の協力により実現した。
国内の既設構造物への市場ポテンシャルを試算したところ、3億平方メートルを超えるコンクリート面への施工が見込まれ、CO2固定量は100万トン超に達する可能性がある。将来的には、構造物解体後に発生するコンクリートガラへのCO2固定化技術としての活用も視野に入れる。
5日の記者会見で北海道大学大学院工学研究院の北垣亮馬教授は「大気濃度のCO2を促進的に吸収できる点に技術的価値があり、学術的独自性も高い。アミンを用いた固定反応系をコンクリート中で実現する例は世界的にも稀で、優位性がある」と説明した。
清水建設技術研究所の齊藤亮介氏は、CO2固定量を高めたタイプと鉄筋の腐食抑制効果を強化したタイプの二種類のコート剤を開発していると明らかにした。いずれも1キロで約1平方メートルを施工できる仕様で、販売価格は1キロ当たり5000円以内を目指す。

