同社は、2018年に名古屋大学発のスタートアップ(新興企業)として創業した。当時、同大准教授としてマイクロRNAを尿から抽出・測定する技術を開発した安井隆雄東京科学大教授が共同創業者であり、技術面を支える。
マイクロRNAは、細胞間のコミュニケーションを仲介する伝達物質で、2000種類以上が確認されている。がん細胞もさまざまな種類のマイクロRNAを放出し、周囲の細胞に送り込みながら増殖する。マイクロRNAを解析すれば小さながんの活動も検知できるため、20種類以上の特許技術を活用し、AI解析によるがんリスク評価のアルゴリズムを開発した。50以上の大学・医療機関との共同研究を通じ、約5万件という世界最大級の尿ライブラリーを構築。がん患者に現れる特定のマイクロRNAのパターンを解析し、AIに学習させている。特に早期発見が難しいすい臓がんに対しては、従来の血液検査(腫瘍マーカー)を大きく上回る検出感度を発揮するなど、著しい成果を上げている。
こうした技術を活用したマイシグナル・スキャンは、検査キットを使い、尿を自宅から送るだけで手軽に検査できる。日本のがん死亡総数の8割を占める10種のがん(食道がん、乳がん、肺がん、胃がん、大腸がん、ぼうこうがん、すい臓がん、腎臓がん、卵巣がん、前立腺がん)の罹患リスクを、80%を超える精度で検出する。
がん検査は通常、血液検査と胸部X線や胃カメラなど複数の検査を組み合わせるが、マイシグナル・スキャンは1回で網羅的に検査できる。検査結果は低、中、高の3段階で表示し、中リスク以上で追加検査を推奨している。血液ではなく尿を使う手軽さと高い検出感度が評価され、全国2000以上の提携医療機関がスクリーニング検査として導入している。
日本人の2人に1人はがんになる時代といわれるが、忙しさや自覚症状のなさ、検査の苦痛などを理由に、がん検診の受診率は30-40%にとどまる。特に建設業は粉じんやアスベスト、有機溶剤など発がん性のある物質を扱う場面もあり、高い喫煙率なども含め、さまざまな健康リスクにさらされる。同社の高井綾香PRマネージャーは「健康管理が重要な職種だが、人手不足や工事の忙しさから、なかなか健康管理に時間を割くことができないのが課題だ」と指摘する。
さらに、建設業は就業者数が過去20年で3割減少し、高齢化も急速に進むため、豊富な工事実績を持つ熟練技術者は受注面や現場管理で長く活躍することが求められている。ただ現場は天候などで計画どおりに進まないことも多く、検査で病院に行くには心理的な負担が大きい。「マイシグナル・スキャンは前日の食事制限がなく、バリウムを飲む必要もないため業務に支障がない。手軽に検査することで健康への意識も高まる」とメリットを挙げる。
同社は法人営業を展開して2年たつが、この一年で建設業での導入が急速に増えていることを実感するという。播太樹法人部門統括は「建設業は資格の有無が重要であり、技術者が一人減ると現場や受注への影響が大きいため、経営者は従業員の健康管理に対して意識を高めている。協力会社の分をまとめて購入するケースもある」と説明する。
業種別の導入割合は建設業が21%を占め、最も多い。地域建設業が中心だが、「大手ゼネコンも支店単位で導入するケースがある。原発関連の補修工事、産業廃棄物処理を手掛ける企業の導入も拡大している」と話す。
マイシグナル・シリーズには4種類の検査キットがあり、多くの企業が定期プラン(3年、5年、10年)の中で組み合わせながら活用している。マイシグナル・スキャンのほか、手軽な検査で全身のがんリスクを評価できるマイシグナル・ライト、唾液を使った遺伝子検査で体質的に罹患しやすいがん種を知るマイシグナル・ナビ、尿からDNAストレスを判定することで生活習慣を改善し、がんリスクの低減につなげるマイシグナル・チェックがある。
高井マネージャーは「なかなか病院に行く時間を確保できない建設技術者でも手軽に検査を受けることができる。健康管理に活用していただき、長く活躍してほしい」と力を込める。



