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私と東日本大震災の15年

寄稿・佐々木正(NIPPO北信越支店舗装事業部長)

最終更新 | 2026/04/09 11:50

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誠実に懸命に当たり前守る

被災した合材工場の完了時全景(前部)

 あの日、2011年3月11日、宮城県内で工事3事業所、アスファルト合材工場3工場を預かっていた47歳の私は変わり果てた沿岸部の光景を前に、ただ言葉を失い立ち尽くしていました。
 特に仙台空港を臨む合材工場の惨状は、今も目に焼き付いています。海沿いの誇りであった松林はなぎ倒され、敷地は無残ながれきの海となっていました。事務所の2階までをのみ込んだ津波はそれまで力強く稼働していたプラント装置を止めてしまい、敷地内はがれきや泥に埋もれて絶望感に包まれていました。
 「アスファルトプラントを復旧」するという言葉は、あまりにも遠く感じられた毎日でした。それでも立ち止まっていた私を一歩ずつ動かしてくれたのはプラントの設備を再生させるために黙々と手を動かす「仲間たちの熱意」でした。自らも被災し、ご家族の安否に胸を締め付けられながらも、泥をかき出し機械設備をきれいにしてくれた従業員の皆さま、寸断された道を縫って駆けつけ機械を操作してくれた協力業者の皆さまが多くを語らず、膨大ながれきの撤去から設備の一つひとつを復旧させることにひたすら手を動かしてくださいました。
 道路建設に欠かせないアスファルト合材を供給することは、地域の血管をよみがえらせることなのだと、そのひたむきな背中が教えてくれました。そしてついにプラントにバーナーの火が力強くあがったときに熱気と歓声が上がりました。災害で壊された日常を自分たちの手でつなぎ直そうとする皆の思いが形になった瞬間でした。
 その後、22年に北信越支店へ移動となり舗装事業部の責任者として新たな任地で職務に従事していました。
 24年1月1日、大地は再び能登半島に猛威を振るいました。石川県珠洲市にあるグループ合材工場が被災したとの報に接したとき私の心は瞬時にあの日の宮城へと戻りました。幸いにも工場設備自体の被害は少なかったものの、電力は失われ、資材を運ぶための道路もあちこちで寸断され、情報も途絶えた孤立状態にありました。
 「あの日の宮城での経験を教訓に、何としても従業員の命と生活を守り抜く」ことを最優先としました。現地と連絡が取れず状況も分からないもどかしさの中で、私は必死に後方支援に当たりました。
 そんな厳しい状況の中、焦燥感に駆られる私たちを救ってくれたのは、官民を挙げた迅速で力強い支援の手でした。国土交通省ほか皆さまによる道路啓開、発電車による電力供給により再びアスファルト合材を製造する準備を整えることができました。
 また現地の工場では従業員が復旧と並行して、地域の生活を支える活動もしていました。古くなって使用していなかった宿舎を急いで整備し、仮設の電源や水タンクなどを設置して富山から給水タンク車で水を運びました。さらに風呂場やトイレを改修して、従業員だけでなく自宅避難されていた住民の方々にも開放しました。工場から「地域の方々からとても感謝の言葉をもらいました」という話を聞き、胸が熱くなりました。その後、施設を利用した一人の女性が、私たちの志に共感して仲間に加わってくれました。現在は製造の技術担当者としてアスファルトプラントの最前線で活躍しています。
 15年という月日は私に大切な教えを授けてくれました。道路建設業の価値は立派な道をつくることだけでなく、誰も見ていないような場所や、厳しい状況の中でも人々の当たり前の毎日を守るために「誠実に、一生懸命に取り組むこと」そのものにあるのだと。
 あの日、私を信じて共に歩んでくれた従業員・協力業者の皆さま、一人ひとりが流した汗が今の宮城の風景をつくり、能登半島の復旧を支える確かな力になっています。この歩みは私にとって「誇り」であり、皆さんに出会えたことは一生の宝物となっています。

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