【生の声で】東北地域づくり協会 東松島市の震災対応記録誌『あの日を語り伝える』を発行 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【生の声で】東北地域づくり協会 東松島市の震災対応記録誌『あの日を語り伝える』を発行

 東北地域づくり協会(仙台市、渥美雅裕理事長)は、東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県東松島市の震災対応などをまとめた記録誌『あの日を語り伝える』を発行した。震災当時に市長を務めていた阿部秀保氏を始め、同市職員や消防団員、自主防災組織の代表ら53人に“あの日”のことを聞き取り、生の声を貴重な教訓として収録。10日に全国の行政機関などに発送した。

 記録誌の発行は、南海トラフ地震の発生時に最大高さ34mの津波が想定される高知県黒潮町が、新たな防災計画に東日本大震災の教訓を盛り込もうと、震災伝承に取り組んでいる同協会に協力を求めたことがきっかけ。

 これを受けて同協会は、震災前から自主防災組織の立ち上げや防災計画・訓練などについて先駆的に取り組んでいた東松島市に相談。渥美巖市長らの協力のもと、関係者に詳細な聞き取り調査を実施した。

 聞き取った内容は、▽命を守る▽行政機能の回復▽避難生活▽物資の確保▽自主防災組織▽まちの再建に向けての第一歩▽来るべき災害への備え-に分類した。その上で、伝えるべき約200項目について教訓とその解説・付記を掲載している。

 いずれも経験者だけが語り伝えられる教訓ばかりで、「庁舎から見える被害って何もない」「マニュアル通りになんていかない」など、口語体で書かれたタイトルも多く、臨場感あふれる内容となっている。

 記録誌はA4サイズ、132ページ。約2000部を発行し、全国の都道府県や市町村などに提供。また、近日中に同協会のホームページにも掲載する予定だ。

 10日に東松島市役所で会見した渥美理事長は「全国から支援を受けた恩返しとして、防災や生き残るための知恵を発信していく必要がある。各自治体が自分のまちの地形や文化、気候などに合った形で防災計画を考えるきっかけにしてほしい」と語った。

 また、渥美市長も「震災から10年の節目を迎えたが、時間の経過とともに忘れ去られることも多い。国や自治体にとって人命を守ることは使命であり、当市の経験や教訓を生かし、次の災害に備えてほしい」と述べた。

会見する渥美理事長(右)と渥美市長



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