【成長フェーズへ加速/インフラ運営を「第三の柱」に】
前田建設の「脱請負」はもはや草創期ではない。全国各地で相次いでコンセッション(運営権付与)事業を受注していることに加え、象徴的なのはこの4月の事業戦略本部の新設だ。インフラ運営事業をリードする組織として土木・建築に並ぶ事業本部に格上げした。インフロニア・ホールディングス(HD)として掲げる2030年度に事業利益(営業利益に相当)の半分をインフラ運営事業で稼ぎ出すという野心的な目標の達成に向け、拡大しつつある市場獲得へ体制を整え一気にギアを上げる。
前田建設が創業100周年を迎えた19年から始まった中長期経営計画「NEXT10」では、「生産性改革」「脱請負事業の全社的推進」「体質改善」の3本柱の戦略が設定され、経営革新本部が主導して取り組みを進めてきた。DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進やBPO(現場業務のアウトソーシング)化、人事評価制度の刷新などによって従来の課題を克服し、成長に向けた基盤を整えた。
生産性改革と体質改善については一定のめどがたったことから、経営革新本部を廃止し、コンセッションをはじめとする官民連携事業に注力するため、事業戦略本部を組織した。初代本部長に就いた坂口伸也氏は「仕事をとにかくつくって、獲得していくという開発フェーズから、次の成長フェーズに今変わってきた」と強調する。成長フェーズでの焦点は「受注確率の向上」と「運営事業の効率化」という二つだ。
増加傾向にあるスタジアム・アリーナでの受注確率を上げていくとともに、上工下水のウオーターPPPを確実に取りこぼさず受注していく。地方自治体のインフラ管理を担う高度人材の不足は顕著になっており、埼玉県八潮市の道路陥没事故を契機として、待ったなしの認識が全国的に強まっている中で、特にウオーターPPPでは同じインフロニアHDである三井住友建設と新たに加わる予定の水ingの存在が大きいという。
「実は前田建設だけでなく、三井住友建設は浄水場などのデザインビルドの経験値が大きい。コンセッションは建設コストを最小化して、維持管理・運営でいかに安定的な利益を出すかが肝になる。前田建設単独のエンジニアリング力に三井住友建設が加われば、当然精度は上がるし、今後、市場が拡大したときにグループとして必要な案件に全て参加できる体制が築ける」(坂口氏)と明かす。さらに水ingが加わることで、設計から建設、機械、電気、運営まで全て網羅できる体制となり、「建設コストの精緻化が進められ、競争力がかなり出てくる」(同)とみる。
好調に受注を伸ばしてきた結果、運営するプロジェクト数が増えてきていることから、SPC(特別目的会社)の経営を効率化して、いかに利益改善を図っていくかも重要だ。民間のノウハウを生かすことで省人化を図ってきたが、ここからさらにデジタル技術によって効率的な運営を進める。愛知道路コンセッションのケースでは公営から民間企業が運営を担うことで、約半分まで省人化できたが、さらに遠隔監視やセンシングを活用した検査などあらゆる技術を取り入れることで「さらに1、2割カットできる」と見込む。
多くの社員に浸透してきた脱請負思考、集まってきたグループ各社とのシナジー、急速に広がりつつある市場での実績。“コアコンピタンス”と表現する他社にまねできない核となる能力を武器に、前田建設は地域の課題を解決し、価値を最大化させる新たな時代のトップランナーへと躍り出る。
