【環境本部の運営方針は?/環境ビジネスの流れ広げる】
鹿島の常務執行役員環境本部長に一木浩人氏が就いた。30年以上の海外勤務を経験し、不動産関係の事業や再生可能エネルギー事業に携わってきた。公害対策に源流を持つ同本部の幅広い事業を踏まえ、「広い視野で、全体のポートフォリオのバランスを取っていく」と語る。技術力を第一にしながら、事業者側として環境ビジネスへの参画も見据える一木氏に、今後の方針を聞いた。
--就任の抱負を
「長く海外で勤め、直近では、ポーランドで再エネ事業に携わってきた。再エネが環境分野で大きな流れになっている一方、本部の本流は公害対策に遡る水処理や産業廃棄物処理、土壌汚染対策であり、現在もしっかり継続している。これらに地熱や新電力など、将来的に新しいメニューも加わろうとしている。広い視野で全体バランスを取ることが重要だ」
--事業をどう展開する
「当本部はエンジニアリングが主体で、技術第一主義は今後も変わらない。当社グループ会社も含めて調査から工事まで一貫対応できる点は強みだ。当本部が担うのは基礎調査と基本設計までで、工事は各支店やグループ会社が担っている。さらに次の段階では環境を一つの事業と捉え、当本部自身がJVやパートナーなどの形で事業サイドの前面に立つことを目指す。これまでに陸上風力発電、バイオマス発電で一部出資もしている。海外で培った新規事業のノウハウも生かしながら、この流れをさらに広げたい」
--海外と国内で感じる違いは
「制度や技術、国民の意識を含め、ドイツやフランスといった欧州の先進国はかなり進んでいる。ただ日本に戻って見回すと、決して遅れてはいない。むしろ日本人の緻密さが生きており、脱炭素の宿題を着実にこなしているのは日本ではないか。欧州も一枚岩ではなく、火力に依存していた国が急速に再エネを重視しつつあるなど、国ごとのばらつきは大きい」
--環境ビジョン2050plusの進捗(しんちょく)は
「ビジョンで示した脱炭素、資源循環、自然再興の3本柱の中でも、大きなウエートは脱炭素にある。2030年までの温室効果ガス排出量の削減目標は十分達成できるとみている。電力関係の対策として、グリーン電力の購入や、当社が一部出資している風力・バイオマスの発電、非化石証書の調達のようなバーチャルPPA(電力購入契約)の三つを組み合わせていく」
「難しいのは、燃料面の対応だ。建設現場で使う重機のEV(電気自動車)化や代替燃料の導入が必要となるが、コストや技術の両面で課題が多く、時間をかけて取り組んでいきたい。50年目標である温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指す上では、電力と燃料だけでゼロに届かない部分は、当社が保有する森林などを生かしたオフセットの道を探る必要がある」
--風力発電に対する考え方は
「タービン価格や施工コストの上昇で、新規着手は洋上に限らず陸上風力発電でも簡単な環境ではない。また、風車の大型化が進んでおり、それに合わせた構造の見直しも進んでいる。ただ、課題の多い市場にこそ燃え、難題を解決し実現させてきたのが当社の歴史だ。コスト面の課題も技術で突破したい。洋上風力発電で手掛けているのは着床式だが、将来、浮体式に取り組む余地は十分にある」
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(いちき・ひろと)1985年3月東大工学部建築学科卒後、同年4月鹿島入社。95年米国ペンシルベニア大ウォートン校卒業(経営学修士)。2009年海外事業本部開発部次長、11年カジマ・ユー・エス・エー上席副社長、15年カジマ・ヨーロッパ社長CEO兼鹿島ヨーロッパ社長欧州統括、22年鹿島執行役員を経て4月から現職。兵庫県出身。62年6月19日生まれ、64歳。
