【形式主義から対話・実質へ/改革まだ“2合目”】
上場企業にインパクトを与えた「資本コストや株価を意識した経営への要請」から3年がたった。上位企業の市場との関わり方は形式主義から対話重視へと進んだ。ルール整備をリードしてきた日本取引所グループ(JPX)・東京証券取引所は今、企業に何を期待し、どこへ導こうとしているのか。金融市場の総本山である東京・日本橋兜町を訪ねた。
市場の制度設計を担う門田耕一郎上場部企画グループ課長は、資本コストや株価を意識した経営への要請について「短期の株価対策を求めているのではない」と強調する。あくまで狙いは、中長期の企業価値向上に向けた成長投資や事業ポートフォリオの見直しなどの具体策を取締役会を中心に検討し、株主・投資家に説明しながら磨き上げることだという。投資家には超短期から長期保有まで多様な時間軸があるため、企業とのギャップは少なからずあるとした上で、「業界の特性を含めて、開示の充実と実効的な対話でギャップの影響を抑え、建設的な関係を築くべきだ」と説く。
要請後、プライム市場で9割の企業が開示に取り組むなど一定の成果が見られる。ただ、「トップの山道裕己CEOは山登りだと2、3合目などと表現しているが、まだまだこれからだという認識だ」と改革の手を緩めない。「ROE(自己資本利益率)8%やPBR(株価純資産倍率)1倍がゴールではない。より良い関係を築くために、お互いが何を求めているのか、対話に一歩踏み出してもらうことが重要だ」と先を見据える。
同じく、企業に変革を迫ってきた「コーポレートガバナンス・コード」はまもなく、5年ぶりの大きな改訂を迎える。今回の改訂で強く打ち出されるのは、形式的な対応を排した“実質化”への移行だ。企業に求められる重要事項が増加の一途をたどり、その全てを形式的に実行・開示することは企業にとって負担が増すだけでなく、投資家にとっても必ずしも納得が得られるものとはなっていない。そうした中で今回のコード改訂は「負担軽減」ではなく、「コンプライ・オア・エクスプレイン(順守せよ さもなくば説明せよ)」に基づいて開示・対話の高度化を図り、形式から実質へと転換を促す。
そうした状況下で、昨今、M&A(企業の統合・買収)など業界をにぎわすニュースの数々は、これまでの枠組みからは考えられない変化が建設企業に起きていることを端的に表している。
大同小異だった各社の戦略は近年、PPP領域や海外市場への注力、ウイークポイントの補完など、明確な違いが顕在化し始めた。大手や準大手、中堅といった枠組みの境界ですら、もはや溶け出しているのだ。だが、この変化もまだ“2合目”なのかも知れない。これから誰が勝者になり得るのか。将来、頂上からの景色を眺められるのは挑戦した者だけだ。
(中村達郎、西山和輝)
