【今後の戦略は?/成長分野で“実装”重視】
大成建設は、2050年のカーボンニュートラル実現を掲げ、環境技術を次世代の成長の柱に据える戦略を加速させている。22年度に新設されたサステナビリティ総本部は、戦略と事業推進を一元的に担ってきた。こうした中、4月に同総本部長に就任した深澤裕紀専務執行役員は「社会貢献から事業貢献へ。環境技術を真の成長分野に」と力を込める。技術の“実装”を重視し、次世代を開く深澤本部長に今後の方針を聞いた。
--抱負は
「4月に総本部内に新設したサステナビリティ・ソリューション統括部を核に、社内の横断的連携と外部との共創を深化させていく。統括部には、経営戦略を担う社長室や技術研究所のメンバーも配置した。これまで脱炭素に向けた要素技術の開発などを先進的に進めてきたが、外部環境が目まぐるしく変化し、現場の繁忙度も高い中、シーズを実際の事業や収益に結びつける『つなぎ』が課題だった。主体的にサステナビリティーを事業として組み込める体制を整え、単なる社会貢献から事業貢献への方向転換を確実なものにしたい」
--具体的な技術戦略は
「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)や、60年間の運用期間も含めてCO2排出量をゼロ以下にするZCB(ゼロカーボンビル)の普及だ。既存建物を省エネ化する『グリーン・リニューアルZEB』は、自社ビルでの実装を経て、顧客からも高い関心を得ている。また、環境配慮コンクリート『T-eConcrete』や、水資源・水環境の持続的な活用を可能にする『ゼロウォータービル』など、脱炭素・資源循環・自然共生を同時に達成する技術の実装を急いでいる」
--市場課題と、業界の枠を超えた連携については
「50年に向けて、データセンターの普及などによりエネルギー需要は伸び続ける。いかに建物の運用エネルギーをマネジメントするかが勝負になる。一方で、建設業は裾野が広く、1社でできることには限界がある。協力会社組織『倉友会』やグループ会社との共感を深め、現場レベルでの環境負荷低減を草の根で広げていく。土木学会などを通じて大手ゼネコン数社と協調し、国への提言やその後のフォローアップも継続的に取り組みたい。例えば、環境配慮型コンクリートも業界全体で仕様を共通化できれば、コストを抑えて一気に普及させることが可能だ」
--10年後の展望は
「次の10年間も本業である土木・建築が屋台骨であることに変わりはないが、この期間に環境技術を真の成長分野へと育て上げなければならない。この10年が勝負だ。27年の国際園芸博覧会(GREEN×EXPO2027)は、当社の技術を世界に発信し、概念ではなく『実装された力』を示す重要な機会になる。変化の速いグローバルな規制にも先んじて対応し、地域の人々にリスペクトされる建設業の地位向上を目指したい」
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(ふかさわ・ひろき)1985年3月山梨大工学部土木工学科卒後、同年4月大成建設入社。2020年4月執行役員東京支店副支店長(土木)兼土木部長、23年4月常務執行役員社長室長、24年7月常務執行役員社長室長兼企業風土改革担当、25年4月常務執行役員サステナビリティ総本部副本部長を経て、26年4月から現職。北海道釧路に10年、南米ペルーに2年半駐在するなど現場経験が豊富。趣味は家族との旅行。自身が手掛けた現場を再訪し、その変遷を眺めるのが楽しみという。山梨県出身。62年8月14日生まれ、63歳。
