【土木学会若手小委&施工の神様】個人にスポットを当て生の声から土木業界の課題を探る | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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【土木学会若手小委&施工の神様】個人にスポットを当て生の声から土木業界の課題を探る

 土木の世界で働いていたのに、去ってしまった人たちの退職理由は何だろうか。勤務時間や休日、待遇、職場環境、給与などさまざまな理由が考えられる中で、退職理由から土木業界の課題を洗い出せるのではないかと目を付けたのが、土木学会の若手技術者たちだ。「土木辞めた人、戻ってきた人インタビュー」と題し、建設業界向けのWebメディアサイト「施工の神様」で11月から連載を開始。大手ゼネコンを退職した女性土木技術者や、結婚を機に退職したが再び土木の世界に戻ってきた女性研究者など、個人にスポットを当てて、土木業界の課題を探る。

■業界外からの反応を期待

 小委員会でインタビュー企画を担当する伊東佑香幹事長(JR東日本)は、「『土木業界には辞めた人の意見を聞く場がない』という話を聞き、それを発信すれば新たな気づきがあるのではないか」と企画の意図を説明。「離職率などで一般化するのではなく、インタビューによって、個の問題として生々しく洗い出したい」と力を込める。

土木学会若手パワーアップ小委員会の伊東佑香幹事長

 施工の神様で連載を始めた理由については「Webメディアなので若い世代に発信できることに加え、土木業界外の人からの反応も期待できる」と話す。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などでも反響は大きく、記事掲載をきっかけに次のインタビューにつながるケースもあった。施工の神様の読者や土木関係者からの寄稿も増えている。
 インタビューを通じて浮き彫りになった課題の1つは長時間労働だ。退職した人のリアルな意見を聞くことで、長時間拘束されることによって発意をそぐような環境の改善が必要だと改めて認識した。そして、発見した課題に対する検討も小委員会内で進める。小委員会内の学会運営ワーキンググループ(WG)では、業務効率化に向けた検討や漸進な技術革新を起こすための議論などを行っている。

■IT活用で情報共有
 WGは、ことし6月に業務の効率化に向けた取り組み状況の把握と施策の提案をまとめている。施策提案の前に若手を中心とした技術者に仕事に関するアンケートを実施。仕事にやりがいを感じている人が多い一方で、資料作成などの効率化を望む声が相次いだ。

小委員会内の学会運営ワーキンググループ・リーダーの片山範孝氏

 アンケート結果を踏まえて、工事書類削減に取り組んでいる国土交通省中部地方整備局へのヒアリングなど調査を実施した。片山範孝学会運営WGリーダー(成田国際空港会社)は、「書類作成の簡素化は既に進んでいる部分が多く、法律などで義務付けられていることも多いことから、そこに注力するのは得策ではない」と分析。若手であることなどの強みを生かし、「IT技術の積極的な活用による情報共有が効果的だ」と結論付けた。

■運営理念定め、活動展開
 土木学会・若手パワーアップ小委員会の活動は、ことしで3年目となった。大学や国・自治体、インフラ企業、ゼネコン、コンサルタントなどさまざまな所属から18人が参加している。活動は土木構造物の見学会や海外に対する日本の土木の魅力発信など多岐にわたる。
 今夏には、遊びながら土木について学べる「防災減災カードゲーム」を作成。各地で出前講座を行い、保護者や地方自治体から好評を博している。より分かりやすいゲームの新たなネーミングや、防災・減災の予算などの要素を採り入れた「大人の防災カードゲーム」の作成などさらなる展開案も検討している。
 小委員会の今後について片山さんは「小委員会の運営理念を定める」と話す。「土木業界の発展への貢献や多様性を生み出すこと、活動のPRと継続性を理念に入れたい。方向性をはっきりさせることで、各職場の理解を得て、メンバーが明確な理由を持って参加できる環境をつくる」と目標を掲げる。

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