【持続的な地下空間へ】土木学会が地下空間シンポ 地下街の老朽化対応や未来の地下空間構想を模索 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【持続的な地下空間へ】土木学会が地下空間シンポ 地下街の老朽化対応や未来の地下空間構想を模索

 インフラの老朽化対応と、防災・減災、国土強靱化への取り組みが進む中、土木学会(林康雄会長)地下空間研究委員会(委員長・木村定雄金沢工大教授)は24日、早大国際会議場で、持続的な地下空間のあり方をテーマにしたシンポジウムを開いた。地下空間の代表的施設である「地下街」は、実はインフラ老朽化問題として挙げられる道路橋や河川施設よりも老朽化が進んでいるインフラでもある。シンポジウムでは大深度も含めた地下空間の活用は、技術革新と制度改正、考え方次第で、大都市と地方都市の今後において都市の大転換につながる可能性があることも指摘された。
 24日のシンポジウムで、「次世代に向けた持続性の高い地下空間の創造 みんなで考えるインフラのあり方」と題したパネルディスカッションにはパネリストとして、▽成澤守エスカ理事施設部担当部長▽外石信新潟市商業振興課課長補佐▽木村定雄金沢工大教授▽塚田幸広土木学会専務理事--の4氏が参加、早大理工学術院の森本章倫教授がコーディネーターを務めた。
 成澤氏が所属するエスカは名古屋市中村区にある1961年開業の地下街維持管理を含めた運営会社。大手組織事務所土木部門の提案を受け大学などと連携し維持管理の共通基盤の可視化を進めていることや、リニア開業へ向け名古屋市の駅前広場再整備プランへの対応について説明した。
 また新潟市職員の外石氏は市の第三セクターが管理する古町エリアにある西堀地下街の現状と今後について紹介した。西堀地下街は日本海側唯一の地下街で、鉄道などターミナルに接続していない。また新潟市古町エリアは県内随一の繁華街だったが、ことし3月までにはすべての大型商業施設が閉店、社会環境変化にどう対応していくべきかが大きな課題だとした。
 名古屋市の地下街でリニア開業に伴い行政主導で進む新たな街づくりとの連携に期待を寄せるエスカと、地方都市で中心市街地活性化が求められる新潟古町エリアの地下街という対照的な事例を取り上げた格好。
 コーディネーターの森本教授は名古屋市エスカについては、「いままで見えない情報を見せていく可視化と情報化は必要だ」とコメント。一方、新潟市の西堀地下街については「古町エリア活性化は大店立地法(大規模小売店舗立地法)による日本の構造的問題。地下街だけで対応することは難しい」とした。
 一方、木村教授は首都圏を事例に、電力洞道や下水道管それぞれの吊り防護、地下鉄のアンダーピニング、交差点下のパイプルーフ、さらには地下鉄ネットワークも重なり合うように、過密化した浅深度の地下空間を構築する日本の土木技術は素晴らしいとした上で、大深度地下も活用すべきとした。
 また塚田専務理事は、老朽化対応と活性化が求められている地下街や地下通路などを念頭に、「地下空間は本当にスクラップアンドビルドができないのか。思い切って別の使い道をすることで都市の大転換につながることもあり得る」と指摘。その上で「プロジェクト構想は土木技術を進化させる。今後も未来の地下空間などのプロジェクト構想をし、達成可能のために必要な建設、維持・更新などの技術を模索することが重要」と主張した。
 木村教授が指摘する「東京湾アクアラインの技術前哨戦だった神田川・環状七号線地下調節池」や首都圏外郭放水路、大深度法制定後の高速道路地下化など、止水や補強技術だけでなく、大断面・長距離シールド、地中拡幅といったプロジェクト対応の技術開発の進展が、地下空間の拡大を加速させる関係にあることが、木村教授や塚田専務理事指摘の背景にある。
 シンポジウムではパネルディスカッションのほか、国土交通省の徳永幸久官房技術審議官(都市局担当)が「持続可能な地下空間のあり方」と題した基調講演を行った。

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