【コンクリがれきを再利用】東大生産技研ら 新たな土木・建築材料を開発 3年後の市場投入目指す | 建設通信新聞Digital

4月30日 火曜日

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【コンクリがれきを再利用】東大生産技研ら 新たな土木・建築材料を開発 3年後の市場投入目指す

 東京大学生産技術研究所の酒井雄也講師とバイオアパタイト(滋賀県彦根市、中村弘一社長)、大野建設(神奈川県愛川町、大野治雄社長)の研究グループは6日、コンクリートがれきと廃木材を粉砕して混合し、ホットプレス(加熱しつつ圧縮成形)することで、コンクリートと木材が融合した新たな土木・建築材料「ボタニカルコンクリート(仮称)」を開発したと発表した。この技術を活用し、内装材や外壁材、合板の代替など、さまざまな土木・建築材料として、コンクリートがれきの再生利用を目指す。

リサイクルコンクリート(下段:右に行くほどコンクリートがれきの割合が多い)と材料(上段:廃木材とコンクリートがれき)

 同日会見した酒井講師は「セメントが不要な植物性コンクリートであることが特徴。コンクリートがれきを細かく分別しなくてもリサイクルでき、完全リサイクルの循環利用を目指している」と述べた。既に東大とバイオアパタイトが2019年夏に特許出願済み。今後は「1年後をめどに現場で実証試験を始め、3年後の製品化を目指す」(中村社長)方針。
 コンクリートがれきの再生過程で必要な材料は、コンクリートがれきと廃木材と水。新たなセメントは不要で、副産物も発生しない。リサイクルしたコンクリート内では、木材の成分の1つであるリグニンがコンクリートがれきを接着している。
 リグニンは多くの植物に含まれるため、廃木材の代わりに、野菜や落ち葉、製紙工程で発生する副産物としてのリグニンなども試したところ、これらでもコンクリートがれきを接着できることを確認した。リグニンは難分解性だが、特定の木材腐朽菌によって生分解されるため、リサイクルコンクリートを使うことで処分が容易になり、環境負荷の低下が期待できるという。
 また、木材だけでなく、接着の主成分と 考えられるリグニンを含む各種野菜などのリグニンを使っても、十分な曲げ強度を示すコンクリート製造が可能であることも確認した。製造条件によっては、一般的なコンクリートの10倍に達する曲げ強度を示す硬化体の製造にも成功したという。
 この技術によって、コンクリートに木や植物の色や香りを付けることができ、木材で接着しているため、成分分解によって繰り返しのリサイクルが可能となる。用途としては「コンクリートパネルや耐火材の代替品になる」(中村社長)ほか、歩道用ブロックやタイルなどを見込む。圧縮強度を向上していけば、建築物の部材としても適用の可能性があるという。
 技術の応用として、セメントの代わりに植物で砂や砂利を接着した新たなコンクリートの製造も可能とみている。
 

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