中村建設(奈良市、中村光良社長)は、奈良市内の閉鎖型植物工場でイチゴ生産に成功した。施工から生産指導を含めたメンテナンス業務をパッケージ化し、地域建設業の新たなビジネスモデルとして営業展開する。奈良の地から挑戦を続ける中村社長に狙いと今後の方針を聞いた 同社が生産に取り組んだきっかけは、交流がある小野組(新潟県胎内市、小野貴史社長)の関連会社であるいちごカンパニーの工場を見学、世界初の閉鎖型植物工場でイチゴ栽培を確立した小野社長の姿勢に中村社長が感銘を受けたことだった。
中村建設の植物工場は、奈良市内の同社資材置き場の一角(敷地面積約175㎡)に建設し、2017年6月に苗を植え、いちごカンパニーの指導を受けながら、同8月に栽培に成功した。改良を重ね、ことし6月ようやく味が安定し、商品化にこぎつけた。
衛生管理を徹底し、外気などから遮断する。あらかじめ登録した生産従事者と電気工事担当者しか工場内には入室できない。中村社長は「社長のわたしでさえ入ることが許可されておらず、ガラス越しにしか見ることができない」と説明する。
同社植物工場では4人のパート従業員を雇用し、全員が農業未経験者だ。通常は2人で管理を行っている。短期間の研修を受けるだけで、基本的に誰でも栽培管理できることを実現した。
イチゴの必要個数に応じて面積を設定でき、空き店舗やビルの空き部屋、倉庫などでも利用することも可能だ。室内(高さ3m内)に5段の栽培棚を設置、空間を立体的に利用することで、狭い面積でも効率良く栽培できる。
「収穫の最盛期は2月で、需要が一番多いクリスマスケーキのイチゴは、ほとんどが輸入物。洋菓子店の一角に工場を設置すれば、毎日収穫でき、1年中、新鮮な国産イチゴでケーキを作ることができる」「イチゴ栽培の難しい、沖縄や東南アジアでも生産ができる。沖縄は訪れる外国人観光客に日本のイチゴのおいしさを知ってもらえるチャンスがある」と活用例を示す。さらに「技術を応用して、葉物野菜を食べる習慣がなく糖尿病が多いミクロネシア連邦などで野菜の生産も行いたい。世界の健康問題や食糧問題の解決につながる」と熱く語る。
だが、中村建設にとってはイチゴの生産が最終目標ではない。建設企業が植物工場を建設する狙いとして、▽雇用の創出▽地域貢献▽建設企業としての利益確保--を挙げた。
中村社長は「われわれはあくまでも建設企業である。ノウハウを蓄積し、植物工場の施工を行い、生産指導、施設のメンテナンスを一括受注することで、建設業の新規事業として確立、利益を確保したい。植物工場の建設受注は主に西日本地域で展開する」と力を込める。
同社が生産するイチゴは9月1日から販売を開始した。価格は1粒(35グラム以上)1000円、同(25グラム以上)700円で、購入希望者は事前に予約が必要。問い合わせは、同社15事業部・電話0742-33-1001。