【設計事務所が拡大のカギ】「第98回CMAJフォーラム」 地方にも波及するCM業務の今を解説 | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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【設計事務所が拡大のカギ】「第98回CMAJフォーラム」 地方にも波及するCM業務の今を解説

 日本コンストラクション・マネジメント協会(CM協会)は、「第98回CMAJフォーラム」を開き、同協会の中井進前会長が「拡大するCM/現状とこれから~公共工事CMの新局面--CM活用ガイドラインの公表~」と題して講演した。CM方式の活用が民間・公共ともに増加傾向にあり、9月には国土交通省が「地方公共団体におけるピュア型CM活用ガイドライン」の公表を見込んでいることから、「公表によって特殊から一般プロジェクトへ拡大し、地方にも波及する。地方での受け皿は設計事務所などが主体になる必要がある。設計事務所の役割がさらなる拡大のかぎを握っている」とし、CCMJ(認定コンストラクション・マネジャー)有資格者増強の必要性などを訴えた。

 6月19日に東京都港区の建築会館ホールで開かれたフォーラムは、新型コロナウイルスの影響を受け、初めてオンライン配信した。
 同日に開かれた協会の定時総会・臨時理事会で役員改選に伴って勇退した中井前会長が、日本でのCMの歴史やCM業務の現状、協会の目指す方向性と今後の課題などについて解説した。

CM業務の現状などを解説する中井前会長

 協会が実施した19年度のCM業務市場調査アンケート結果によると、有効回答18社のCM業務(ピュアCM)売上高は総額約257億円だった。前年度の約136億円(有効回答14社)と単純に比較はできないものの、前年度に引き続き回答があった9社の売上高を地域別に見ると、関東圏の比率が依然として高い一方で、近畿、中国、四国、九州、沖縄などで増加し、西日本を中心にCM業務の仕事が広がっている。

地域別売上高


 その9社の売上高に占める発注者別の比率は官庁・公共団体が約1割、民間が約9割で大きな変動はない。金額ベースでは官庁・公共団体が前年度比36.9%増の12億6400万円に増加した。

用途別売上高


 中井前会長は、「公共工事でもCMを広げようという動きが、国土交通省主導で活発化している」とした上で、「公共の仕事の受け皿を誰がやるのか。データからは受け皿は設計事務所であり、設計事務所が受け皿にならないと回っていかない」とし、CM業務の地方への拡大のかぎを握る設計事務所の役割に期待を寄せた。

 CM業務のさらなる拡大を後押しする国交省のガイドラインについては、「4月の初めに公表される予定だったが、新型コロナウイルスの影響で最終の3月の検討会が延期された。次の検討会は8月に開かれる予定なので、9月には公表される」との見通しを示した。

 2月に日本建築士会連合会、日本建築士事務所協会連合会、日本建築家協会の建築3会が国交省に提出したガイドラインへの要望書に対しては、「設計段階はCMではなく発注者支援業務ではないかという部分と、資格要件は1級建築士だけという2つの要望があったが、わたしに言わせると志が低い」と批判した。

 要望書には、建築事業の「ピュア型CM業務」の管理技術者要件については、「1級建築士+補完的要件」とし、1級建築士資格に加え、CCMJの資格を改めて課す必要はないなどの考えが盛り込まれていた。

 協会がまとめているCM業務委託契約約款・業務委託書については、ガイドライン、改正民法と整合性を図るために近く改訂する考えも示した。

 協会が目指すべき方向性と今後の課題については、信頼される高い質のCMrとしてのレベルアップ、地方でのCMの受け皿確保、CM普及に向けた団体としての明確な立脚点などを挙げ、「ウィズコロナ・アフターコロナの枠組み変化にもCMが対応できる可能性が大きい」とした。

 一連の解説後、参加者からの質疑応答に移った。「地方の設計事務所のCCMJ資格取得者を増やすための課題があれば教えてほしい」との質問に対して中井前会長は、「あまりハードルが高くなるのも問題だと思っている。CCMJは公共・民間プロポーザルでも半ば公認資格になりつつある。ちゃんと勉強すれば取れる資格であり、国の制度にするというものではないのではないかと考えている」と答えた。

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