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【けんちくのチカラ】コピーライター 糸井重里さん×建築家 隈研吾さん

最終更新 | 2021/12/14 13:47

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しょうがなさ肯定する「be動詞のような街」

 

コピーライターの糸井重里さんが長年探し続けてきた会社の移転先は、東京・神田だった。昨年、青山から引っ越した。夜遅く、何度も見に来て心引かれたのは「居たから居るんだ」とでもいう街の在り方だった。それを「be動詞のような街」と形容する。決して合理的ではない。「西洋的な合理性で言えば『do』で解決しろよというような場所」であるが、時間軸で決まり、自分で選択できないことの価値があると話す。これを受けて建築家の隈研吾さんは、東京国立近代美術館の展覧会で提案した「東京計画2020」のモデルの街、東京・神楽坂が、ある種の「しょうがなさ」を肯定する点で神田に似ていると、be動詞のような街の共通点を指摘した。

東京国立近代美術館「眺めのよい部屋」

◆半ノラのネコ目線で都市計画

 対談場所は、隈さんの展覧会『隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則』が開かれていた東京国立近代美術館の「眺めのよい部屋」。対談に先立って糸井さんには隈さんと一緒に展覧会を見てもらった。
糸井さんは「建築が一堂に会した展覧会を見るのは初めて。建築は普段環境として見て個性を受け取る習性がないものですから、建築家の個性が聞こえてくるというのは面白かったです。メロディーが聞こえますよね」と印象を話る。

隈さんは「メロディーというのは面白いですね。まさにぼくの建築は音楽に近いと思っていて、ジャムセッションみたいにタイミングで演者が出てくる感じです。今回の展覧会では、模型のつくり方を材料まで含めて指示しているものをまとめて見られるため、メロディーが聞こえやすいのかもしれません」と述べる。

 

 

 展覧会では猫の視点から都市を見直す「東京計画2020 ネコちゃん建築の5656原則」というユニークなリサーチプロジェクトが提案された。タイトルから建築家・丹下健三の「東京計画1960」が想起されるが、そのアンチ・テーゼとも言える猫の目線による下から見た都市計画である。デザイン・イノベーション・ファームのTakramと協働で取り組んだ。この計画での猫はハコと外を自由に行き来する半野良の猫で、その行動はコロナ禍でハコから抜け出す大きな一歩を踏み出そうとしている人間に、大きな勇気を与えてくれると隈さんは指摘する。

 当時の美術館主任研究員で現在滋賀県立美術館ディレクター(館長)の保坂健二朗さんとのやり取りをこう振り返る。

「美術館の保坂さんが『意地悪な』謎かけをしてきて、いまの時代の東京計画を描いてくれというので、そもそもいま大きな都市計画を描くなんて恥ずかしい話で、それを分かって言ってきているのでこれはワナだなと感じて(笑)、全然違う答えを出してやろうと思ったんです。自分が住む神楽坂は、制約があり過ぎるほどごちゃごちゃしているのですが、この既にある都市を猫の目から見るとまったく違った都市に見えるのではないか、それを見せるのが最も現代らしい都市計画ではないかと超ひねくれた答えを出してみたということなんです」

 

◆エントロピー豊かな文章

糸井さんは「そのひねくれた考えとまったく同じものを僕も持っていて、とても共感する」として、中国の上海のエピソードを話した。

「上海にビルがどんどん建っていた時、ある種、自慢そうに建てているような気分を感じた自分は全然うらやましくなかった。何で自分はうらやましくないんだろうと思って、その確認のためだけに上海に行ったんです。実は空港に降りる前に上空から上海を見た時、見事に整理されていて、邪魔なものはどかして、きれいにつくっているのが分かりました。人が住んでいる文化の地図を上から見ると文章になるというのが僕の考えの基本で、上海はエントロピーの少ない文章でした。お役所の文書を読まされている感じです。エントロピーに富んだ町の方が人はうれしい。実際に行ってみて、あまりうらやましくないという結論になったんです(笑)」

「ニューヨークの摩天楼という言葉を聞いただけで憧れる時代がありましたが、乱暴に数字を競うような上海のビル建築を見て、そういう時代はもう終わったのだなと改めて気付けました。うらやましくないことが分かった時、何でキングコングがエンパイアステートビルに登ったのだろうかとか、何でクライスラービルを見るとうれしく感じるのだろうかなど、一見取り立ててどうということもないことが僕らの喜びになっていることにも気付いて、その考えをもとに自分が住みたいところ、会社(ほぼ日)を置きたいところを結構長いこと考えながら生きてきたんです。きょうの展覧会を見て、本職の人が似た考えということが分かって、すごくうれしかったですね」

隈さんは「人類は狩猟から農業を始めて、まちができて拡大し、土地が足りなくなって行き着くところ超高層になった。だけどこういう時代が終わったなと多くの人が感じていると思うんです。東京計画2020で猫の視点を使ったのは、猫は目線が低く、ビルを隙間のテクスチャーとしか認識していないはずで、むしろその方が自然な街の在り方じゃないかと思ったからです」と語る。

◆「居たから居るんだ」

糸井さんは、神楽坂と神田の共通する点について「be動詞のような街」と形容する。「神楽坂は車の入れない道がとても多く、運転する人にとっては不便な街と言えます。それは時間軸で決まってくる『居たから居るんだ』という『be動詞のような街』です。西洋的にはdoで解決しろよと言うような街。合理主義者はもっとこうすればいいのにと言うに決まってるのですが、こうした選択ができないことの価値があります。神田に引っ越したのはそういう部分があったからです。ただ居るということに言い分があるはずで、その言い分と新しい考えを合わせてビジョンをつくることが大事です。表地と裏地の関係で、神楽坂も神田も先にある材料で裏地をつくっちゃっていて、そこからしょうがないものもありながら、いままでの歴史を大事にして人が住んでうれしい場所というものをどうやってつくるかを考えているような場所だと思います」

ほぼ日神田ビル。1階には通りから見えるガラス張りのラジオブースがある

ほぼ日が神田に移ったことを隈さんは「時代の変化を象徴するような出来事」と話す。「ぼくも神楽坂は住むには面白いと思って2000年ごろに引っ越したのですが、自分の住んでいる町をテーマにしたのは初めて。be動詞というか、いまある街としてしょうがないというようなところからスタートする街づくりに焦点を当てたわけです。それが(ほぼ日の引っ越しと)ほぼ同じ時期だったのですね」

◆地方の御用聞きになる

隈さんがぜひ糸井さんに聞きたかったのが地方とのつながりだという。
「地方で面白いものを探してきて糸井さんの所で売っているものが結構あるじゃないですか。それは僕が地方でやっている設計とすごく似ていると思ったんですよ。糸井さんのように本当に楽しく地方のある場所に目をつけて、面白い人を見つけて活動しているやり方が、僕が地方で面白い職人さんを見つけてきて、その人の技を使わせてもらってものをつくることに近い。地方をある種現代的な経済につなげるという、モノとコトのつなぎ方としてのすごく良いモデルを出してくださっているなと思っています」

糸井さんはこれに対しては難しく思っていると述べる。「地方を見るきっかけは、やはり震災(東日本大震災)だったんですよ。お手伝いしたいっていう気持ちが始まりでした。失敗談もたくさんあります。例えばこれから(復興に)立ち向かっていくファイトのある人にたくさん出会って、西部開拓史のようだと思ったんですよね。未来の人たちから見るとこの人たちは先祖になるわけです。先祖の人たちを写真に撮っておいたらどうだろうかと思って、東京から写真家の篠山紀信さんを呼んで写真を撮ろうかと考えたのですが、そうすると地元の写真館の邪魔になるんですよね。ですから中央のとか、有名なとかいうやり方は駄目なんだと気づき、僕らが御用聞きにならなきゃいけないんだと分かって、それが最初に頭の中を切り替えるきっかけでした」

「いまも語り草になっていますけれど、NHKの震災復興番組で、地元のつくったものをじゃあ食べてみましょうと振られて、僕はノーコメントと言ってしまったんです。ひどい話ですけど。これは地元の人と事前にたくさん話して親しくなった後で発言したもので、勝負して負けるものを出しちゃダメだよっというコメントだったのです。こうしたことまでちゃんと話せる友だちのような関係性ができて初めて、地方とのやり取りが本当にできるような気がします。すごい不器用ですけれど、僕らが少し進んでいるとすればそのあたりじゃないかと思うんですね」

隈さんもそこはとても共感できると言い、「職人さんとフラットにやり取りができるようなプラットフォームができればもうしめたもので、このフラットな土俵をつくることがこれからのデザイナーや建築家にとって一番大事なことだと思っています。また、建築設計というのは、ある種、観光でもあると思います。僕は学びも観光だと思っていて、学びというテーマにも興味があるんです。そして、これからの地方都市は観光と学びを一体でいくべきじゃないかと思います。糸井さんは、神田で教育も重要な位置付けにしておられるのですよね」と話す。

教育については糸井さんも注目していて、近年はほぼ日ではアプリの動画配信を中心とした「ほぼ日の學校」という新たな学びの場所を育てていこうと活動している。

「学校が好きじゃなかった人たちがあそこなら行くよという、誰でも参加できる学校にしたいんです。信号待ちでたまたま一緒になったような人たちにも面白がってもらえるような、普遍性のある場をつくれたら」と述べる。

東京国立近代美術館の隈研吾展会場で



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