【BIM/CIM未来図】不動テトラ(中) 工事部所属で数ヵ月かけスキル習得/現場所長の講習もスタート | 建設通信新聞Digital

5月2日 金曜日

B・C・I 未来図

【BIM/CIM未来図】不動テトラ(中) 工事部所属で数ヵ月かけスキル習得/現場所長の講習もスタート

 不動テトラでは、現場担当のBIM/CIMスキル向上を目的に「CIM育成要員」という独自の人材育成を試みている。工事部所属のまま、社内で数カ月にわたってBIM/CIM関連スキルを習得させ、現場に戻った後にはBIM/CIMの推進役として活動してもらうことが狙いだ。

現場管理者対象のCIMマネージャー講習

 BIM/CIM人材の育成を統括する小林純CIM/ICTプロジェクトチーム座長は「現場業務とBIM/CIMスキル習得の両立は難しい。BIM/CIMに専念できる環境を与えることが欠かせない」と導入の背景を語る。同社は国土交通省のBIM/CIM原則適用を機にBIM/CIMの主体を従来の技術部から最前線の工事部に切り替えた。現場担当のBIM/CIMスキル向上が定着のカギを握ることから、原則適用前の2022年度からCIM育成要員の取り組みをスタートさせた。

 1期は3人、2期は5人、3期の24年度は3人を選抜する予定だ。1期生は大塚商会が主催するBIM/CIMの外部研修で、社内標準に位置付けるオートデスクのBIM/CIM関連ツールの基本操作を習得し、2期生からはオートデスクの情報サイト『BIM design』に掲載している教材を使い、現場にいながら各ソフトの操作ポイントを学ぶスタイルに切り替えた。自らが担当する現場の3次元モデル化やAR(拡張現実)技術を使った現場の見える化など、実践トレーニングにも挑戦し、現場での活用スキルを徹底的に磨く。

 当時、東京本店土木工事部工事課に所属していた1期生の内池聖享氏は「集中してBIM/CIMスキルを一通り学ぶことができた。今では現場の合意形成ツールとしてBIM/CIMをフル活用している」と語る。研修時には交差点内の特殊人孔を施工する現場を対象に、4方向からの枝線接続を把握するための3次元モデルを2日間で仕上げた。施工ステップを見える化するし、工事関係者との合意形成が円滑化する成果につながった。

 育成期間は半年間を基準にしているが、所属現場の進捗に応じて期間を短くせざるを得ない場合もある。現場の特徴も異なることから、所属現場で役立つ最善のプランを組んでいる。育成メンバーには各拠点で毎月開かれる所長会での成果発表をゴールとしており、それによって所長クラスがBIM/CIMの有効性を知るきっかけにもなっている。

 今年の3月と4月には、現場管理者(現場所長、工事部課長)を対象としたCIMマネージャー講習もスタートした。2回で計50人が受講した。BIM/CIMの基礎を学び、社内の実施例を題材に導入効果や見積もりの作成方法などを共有した。講師を務めた小林氏は「BIM/CIM活用の経験によって理解度は異なる。自主的に2回参加した所長もおり、理解を深めたいという前向きな意識を感じた」と振り返る。

人材育成の概要


 グループ会社からBIM/CIM導入を前向きにとらえたいという動きも出てきた。高橋秋和建設(秋田市)には今年2月に2日間にわたってCIMマネージャー講習とBIM/CIMソフト実演講習を実施した。原則適用を背景に「グループを挙げてBIM/CIM活用が進み出した」と手応えを口にする。

 BIM/CIM活用を現場主導に切り替えた不動テトラでは、これまで技術部が担当していた現場完了後のBIM/CIM実施報告書の作成についても、現場の役割になった。土木事業本部技術部の山崎真史副部長は「最前線の現場が主体となり始め、技術部は支援役としての色合いが強まってきた」と実感している。呼応するように現場のBIM/CIM活用は高度化し、それが生産性向上の成果につながり始めている。



【B・C・I 未来図】ほかの記事はこちらから



建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら