特別インタビュー・参院選に出馬する職域代表候補 見坂茂範氏に聞く | 建設通信新聞Digital

5月20日 火曜日

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特別インタビュー・参院選に出馬する職域代表候補 見坂茂範氏に聞く

【業界に行き渡る仕事量を確保/利益率高め、もうかる産業に】
 建設産業界の職域代表候補として、今夏の参院選に自民党公認(比例区)で出馬する見坂茂範氏が、日刊建設通信新聞社などのインタビューに応じ、業界に対する思いや自身が考える政策の方向性などを語った。見坂氏は「私がやるべきことはシンプルに二つ。まずは、建設業界で働く皆さんの仕事の量を確保する。そして、業界で働く全ての人の賃金が上がるように、もっと利益率が高い、もうかる産業にしていく」と強調した。 佐藤信秋参院議員から後継指名を受け、政界を目指すことを決断してから約1年が経過した。この間、「やはり新人の選挙はとにかく大変」と痛感しつつ、「全国の一人でも多くの方に直接話を聞いていただき、私の人柄や目指す政策を知ってもらいたい」という気持ちで、文字どおりの全国行脚を展開してきた。
 現在の政情を踏まえ、逆風を感じることはあるものの、「建設産業界の職域代表がいなくなれば、業界は大変なことになる。絶対に負けられない選挙だ」と肝に銘じている。職域代表の二枚看板の一翼だった足立敏之氏の急逝もその思いに発破をかける。
 国土交通省時代から実感していたものの、「業界が抱える一番の課題は担い手不足。これは建設業に限ったものではないが、建設業は日本の社会や経済を支える屋台骨であり、一人でも多くの若者にこの業界に入ってきてもらわなければならない」との思いを強くする。
 担い手確保には「休暇ももちろん大事だが、まずは働く人の賃金、収入アップを図っていかないと、若い人たちに選ばれない」と指摘。その大前提として、一丁目一番地に掲げる「仕事の量の確保」がある。「建設業は受注産業であり、企業の経営努力だけではどうしようもない部分がある。まずはとりわけ公共事業。民間の仕事ももちろんあるが、公共工事が多いところは、インフラの充実などに伴って民間工事もおのずと増える。このような状況を全国各地につくりたい」と展望する。
 事業量確保の観点からも業界が注目する国土強靱化実施中期計画は、5年20兆円強という規模感となるが、「全国で災害が頻発している状況を踏まえると、個人的にはもっと必要ではないかと感じている。ただ、『強』の部分は毎年毎年の予算編成過程で決まるそうで、その意味では私自身の仕事として頑張っていく必要があり、業界の期待に応えていきたい」と前を向く。
 全ての土台となる仕事の量を確保した上で、企業としての収益性を高め、働き手の賃金上昇につなげる「質の向上」にも同時並行的に取り組む方針だ。折しも昨今、大手企業を中心に初任給の引き上げが相次いでいるが、「今現在、建設産業で働いている全ての方々の賃金が上がるようにしていきたい」と意気込む。
 国交省では、直轄工事・業務の入札契約制度や積算基準などを所管する本省技術調査課長を務めた、いわばその道のプロ。「例えば公共工事に関して言うと、一番分かりやすいのは落札率を上げることであり、低入札調査基準価格や最低制限価格の上限ラインを1%でも2%でも引き上げたい。また、現場管理費や一般管理費といった諸経費の率を上げるなどして、予定価格そのものをもっと充実させる。最近の猛暑での作業環境を踏まえ、歩掛かりを見直す必要もあるだろう。特に、現場実態との乖離(かいり)が常々指摘されている自治体発注の小規模工事の歩掛かりは、国がひな型を整備したり、補正係数を考えたりする必要があるのではないか」などと発想は尽きない。
 時間外労働の上限規制適用から1年が経過した中、気候・気象に左右される屋外作業が基本の建設業からは、さまざまな指摘が上がってきている。「2年、3年もたつと、もっといろいろな弊害が出てくると思う。机上の空論ではなく、現場の実態を把握して当事者の意見を吸い上げ、地域の実情に応じて柔軟に対応するべきだ。いずれ労働基準法の再改正、法改正まで行かなくても例外規定の設定などが求められてくるだろう」との認識を示す。
 「建設業には夢がある。自分が携わった仕事が形になって後世に残り、地域にも喜ばれる。こんなにやりがいのある建設業に、一人でも多くの若者に入ってきてほしい」。こんな思いを胸に、選ばれる産業となるための環境整備に全力を注ぐ決意だ。
(けんざか・しげのり)1993年3月京大大学院工学研究科土木工学専攻修了後、同年4月建設省(現国交省)入省。近畿地方整備局京都国道事務所長、道路局企画課評価室長、福岡県県土整備部長、関東地方整備局企画部長、官房技術調査課長、近畿地方整備局長などを歴任した。趣味はランニング、野球、旅行。兵庫県出身、56歳。