内閣府と土木研究所は、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期課題「スマートインフラマネジメントシステムの構築」のうち、サブ課題Bの「先進的なインフラメンテナンスサイクルの構築」にスポットを当てたシンポジウムを3日に開いた。パネルディスカッションでは、インフラメンテナンスの分野でSIPに関わる研究者らが登壇し、社会実装に向けた現状の課題やSIPが終了した後のビジネスモデル構築について意見を交わした=写真。 SIP第3期課題は未来の建設技術、インフラ、まちをイメージしながら、デジタルを駆使して持続可能な国土づくりに寄与するシステムの構築を目指している。期間は2027年度までで、土木研究所が研究推進法人を担当する。サブ課題Bの研究開発責任者は、石田哲也東大教授が務めている。
パネルディスカッションには石田氏のほか、レーザー打音検査や遠隔でのコンクリート表面の化学組成計測を研究する中村光名古屋大教授、非破壊地下探査技術に取り組む神宮司元治産業技術総合研究所グループ長、土木技術とAI(人工知能)と組み合わせた構造物の探査技術に挑む全邦釘(チョン・パンジョ)東大特任教授、建設用3Dプリンターの社会実装を目指す岩本卓也Polyuse(ポリウス)代表取締役が登壇した。司会は、真鍋政彦日経BP日経コンストラクション編集長が務めた。
社会実装に向けた戦略について、神宮司氏は研究に協力している自治体へのアンケートで「実証データが1番求められていることが分かった」と語り、「SIPが推し進めている研究開発で実証を積み重ね、自治体の信頼を勝ち取っていくことが肝になる」と述べた。
全氏は、地域住民が使うことをイメージして技術開発し、「実際に住民に使用した感想を聞き、不要と判断された機能はそぎ落とすなど取捨選択をしている」と明かした。「先進的な技術がいくらあっても、住民が使いたいと思わなければおそらく普及はしない。使っていて楽しいシステムだということを心掛けている」と述べた。
一方、岩本氏は、PoC(概念実証)が完了し、プロダクトマーケットフィットもある程度構築されているなど、3Dプリンティング技術自体は確立しているものと説明。「先進的な技術があって、それをいかに社会にフィットさせるかという難しさより、私たちは最初から社会のニーズに基づいて事業を進めている」と話し、先進技術と社会ニーズのどちらを出発点にするかで社会実装に向けたアプローチが違う点を指摘した。
中村氏は、SIPで研究を進める中で、従来の点検要領で行う点検をいかに合理化できるかという議論になることに違和感を示し、「今の点検要領で防ぐのは難しい、私たちが知らないリスクがある。非常に高度な技術を開発できれば、その知らないリスクを減らせる可能性がある」と指摘。「自治体のニーズに応えるのは分かりやすい。ただ、それだけでリスクは減らせるか、DX(デジタルトランスフォーメーション)は達成できるかも合わせて議論しなくてはならない」と提起した。
この意見を受けて岩本氏は、コストベースではなく新技術を実装するとどのようなバリュー(価値)が生まれるのかといったバリューベースの議論が必要だと強調した。「今のタイミングで価値観の形成から変えないと、社会に新しいテクノロジーを実装するのは難しい。変わらなくてはいけないという風潮ができるかが、建設業に問われている」と語った。
ビジネスモデル構築の話題では、岩本氏がボトルネックの一つに海外も視野に入れたルールづくりを挙げた。「デジタル化が進むと情報の伝達性が高まり、その分、外部からの参入が容易になる。国際競争だと認識し、早急に日本でルールをつくり世界に踏襲させていくところまで描いて事業展開することが重要だ」と呼び掛けた。
石田氏は「海外のマーケットは巨大だ。日本が抱える社会的課題は海外に先行する部分なので、そこを見据えたスケーリング戦略を構想しないといけない。都市のインフラもだが、物流や交通に関するデータも含めデジタル化し、国際展開することにとても可能性を感じる」と締めくくった。
パネルディスカッションには石田氏のほか、レーザー打音検査や遠隔でのコンクリート表面の化学組成計測を研究する中村光名古屋大教授、非破壊地下探査技術に取り組む神宮司元治産業技術総合研究所グループ長、土木技術とAI(人工知能)と組み合わせた構造物の探査技術に挑む全邦釘(チョン・パンジョ)東大特任教授、建設用3Dプリンターの社会実装を目指す岩本卓也Polyuse(ポリウス)代表取締役が登壇した。司会は、真鍋政彦日経BP日経コンストラクション編集長が務めた。
社会実装に向けた戦略について、神宮司氏は研究に協力している自治体へのアンケートで「実証データが1番求められていることが分かった」と語り、「SIPが推し進めている研究開発で実証を積み重ね、自治体の信頼を勝ち取っていくことが肝になる」と述べた。
全氏は、地域住民が使うことをイメージして技術開発し、「実際に住民に使用した感想を聞き、不要と判断された機能はそぎ落とすなど取捨選択をしている」と明かした。「先進的な技術がいくらあっても、住民が使いたいと思わなければおそらく普及はしない。使っていて楽しいシステムだということを心掛けている」と述べた。
一方、岩本氏は、PoC(概念実証)が完了し、プロダクトマーケットフィットもある程度構築されているなど、3Dプリンティング技術自体は確立しているものと説明。「先進的な技術があって、それをいかに社会にフィットさせるかという難しさより、私たちは最初から社会のニーズに基づいて事業を進めている」と話し、先進技術と社会ニーズのどちらを出発点にするかで社会実装に向けたアプローチが違う点を指摘した。
中村氏は、SIPで研究を進める中で、従来の点検要領で行う点検をいかに合理化できるかという議論になることに違和感を示し、「今の点検要領で防ぐのは難しい、私たちが知らないリスクがある。非常に高度な技術を開発できれば、その知らないリスクを減らせる可能性がある」と指摘。「自治体のニーズに応えるのは分かりやすい。ただ、それだけでリスクは減らせるか、DX(デジタルトランスフォーメーション)は達成できるかも合わせて議論しなくてはならない」と提起した。
この意見を受けて岩本氏は、コストベースではなく新技術を実装するとどのようなバリュー(価値)が生まれるのかといったバリューベースの議論が必要だと強調した。「今のタイミングで価値観の形成から変えないと、社会に新しいテクノロジーを実装するのは難しい。変わらなくてはいけないという風潮ができるかが、建設業に問われている」と語った。
ビジネスモデル構築の話題では、岩本氏がボトルネックの一つに海外も視野に入れたルールづくりを挙げた。「デジタル化が進むと情報の伝達性が高まり、その分、外部からの参入が容易になる。国際競争だと認識し、早急に日本でルールをつくり世界に踏襲させていくところまで描いて事業展開することが重要だ」と呼び掛けた。
石田氏は「海外のマーケットは巨大だ。日本が抱える社会的課題は海外に先行する部分なので、そこを見据えたスケーリング戦略を構想しないといけない。都市のインフラもだが、物流や交通に関するデータも含めデジタル化し、国際展開することにとても可能性を感じる」と締めくくった。