安全対策が進む現場公開/旧陸軍被服支廠で見学会/広島県 | 建設通信新聞Digital

8月5日 火曜日

行政

安全対策が進む現場公開/旧陸軍被服支廠で見学会/広島県

安全対策工事が進む
親子連れなど市民57人が参加
【施工=清水・共立JV】
 国の重要文化財で被爆建物として最大規模の「旧広島陸軍被服支廠」の安全対策工事の現場が3日公開された。被爆の実相を伝える施設として安全対策工事が進んでおり、RC造として現存最古級で、先駆的な技術が結集されている希少な遺構が紹介された。工事は清水建設・共立JVが担当している。同日、広島県の主催で一般向けの現場見学会も開かれ、親子連れなど市民57人が参加した。
 施設は、県所有の1-3号棟、国所有の4号棟で構成されている。規模は1-3号棟が延べ5578㎡×3棟、4号棟が延べ4985㎡。大正3年に建設され、柱や梁、スラブなどはRC造、外壁などをれんが造りとする希少な建造物。被爆後は臨時救護所となり、以降も継続して使用されてきた被爆建物であり歴史的にも価値が高いとされている。
 明治期に、特異な形状のカーン式鉄筋コンクリート、基礎に場所打ちコンクリート杭の始まりとされるコンプレッソル杭など、海外の先駆的な技術が用いられた。
 安全対策工事は現在、屋根瓦のふき替えが進んでいる。5万枚に及ぶ瓦の状態を確認したうえで、全体の3割を再利用する。今後は床面や鉄骨のブレース補強や柱補強、煉瓦壁ひび割れ補修、原爆の爆風でゆがんだ鉄扉の補強などを進める。
 施工を担当する清水JVの高橋伸二工事長は「昨年に重要文化財の指定を受けたため、重要文化財を扱う設計になっていない。そのため、調査により文化財的な価値(課題)を見つけ出し、それを解決していくことに取り組む」と話す。工期は4号棟が2026年9月、1-3号棟が27年2月まで。