フィーチャーインタビュー2025・旭化成建材 前田 栄作社長 | 建設通信新聞Digital

8月26日 火曜日

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フィーチャーインタビュー2025・旭化成建材 前田 栄作社長

【異分野、非建築領域参入に活路/豪州・北米の製品ニーズ探る】

 新社長に就任して約5カ月。人口減少や人手不足など国内の建築分野を取り巻く環境が厳しさを増す中で早速その対応に取り掛かる。非建築領域への参入や海外事業展開の検討、現場でのAI(人工知能)やDX(デジタルトランスフォーメーション)の活用などに積極的な姿勢を示す。  --2024年度の振り返りと25年度の展望
 「24年度は中期経営計画の最終年度だった。新築物件は減少傾向がトレンドだが、非建築領域への参入や一部のALC(軽量気泡コンクリート)工場の閉鎖などで売り上げと営業利益が改善した。潮目が変わり始めた3カ年の最終年度で社員が頑張ってくれた。25年度は、断熱や鋼管杭などを中心に利益を伸ばしていきたい」
  --AIやDXの活用について
 「変化が激しいので素早く対応していきたい。杭基礎関係はこれまで紙ベースのやり取りだったが電子システムを開発した。下期からはその運用を進める。私も実際に現場を確認したが、まだまだペーパーレス化の余地はある。現場ではこれまでアナログで運用することにより負担があったが、ペーパーレス化により負荷を軽減していきたい」
  --人手不足対策について
 「ALCや断熱材の製造工場の検査工程では機械化を進めているが、人に依存している部分も多い。カメラや生成AIを活用することにより正確に確認ができ、省力化や無人化につながる。人手不足の状況下にあるため、これまで以上にスピード感をもって対応していきたい」
  --人材育成の方針は
 「旭化成グループはマテリアルと住宅、ヘルスケアと三つの領域がある。“たこつぼ化”させないため、例えばマテリアル領域との人材交流などを実施していきたい。また、これまでグループ内の人材交流のための社内公募はあったが、旭化成建材内での交流を進めるために検討している」
  --長期的な市場展望と、これに合わせた事業の方向性は
 「人口減少を踏まえると国内の住宅環境は右肩下がりだ。非建築領域の市場のシェアを広げていかないと生き残れない。工場の建設、国土強靱化計画の中でのインフラ整備や再生エネルギー事業などで基礎関係、断熱材の参入余地はまだまだある。これまでとは異なる分野への転換も柔軟にしていかなければならない。このほか、旭化成ホームズでオーストラリアと北米での海外展開を始めているので、それに伴う自社製品のニーズを探っていきたい」

 (まえだ・えいさく)お勧めの一冊は松下幸之助『心をひらく あなたの人生を変える』。社長に就任してからは予定表を開示し、社員からの飲み会の誘いに応えられるよう備えている。