そこが聞きたい・大成温調執行役員人財統括部長 柏倉 聖一氏 | 建設通信新聞Digital

9月10日 水曜日

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そこが聞きたい・大成温調執行役員人財統括部長 柏倉 聖一氏

【LIVZONエールプロジェクトの狙いは?/エンゲージメント高い組織に】

 大成温調は、社員と家族の結婚や出産などライフイベントを応援する「LIVZONエールプロジェクト(りぶえる)」を2025年度に始めた。最大100万円支給の手厚い出産祝い金制度や、建設業界初となる完済までの奨学金代理返済制度など、福利厚生の取り組みを次々打ち出している。「大成温調の社員で良かったと思ってもらいたい」と話す柏倉聖一執行役員人財統括部長に、りぶえるの狙いや今後の展開を聞いた。 「当社はモノを売っているのではなく、技術を売る会社。社員がいなければ成り立たない。こうした考えから、65歳定年制や従業員向け株式インセンティブ制度の導入など、人的資本投資をここ数年強化してきた。だが、人的資本投資という言葉では、なぜ取り組むのかが社員に伝わりにくい。分かりやすく示すために、りぶえるを始めた」と狙いを語る。
 社員を大事にする企業姿勢は人財統括部の名称に表れている。「何十年も前から社内で『人財』の言葉を使ってきた。社員が財産という意識が根付いている」とし、りぶえるを通じた人的資本投資の強化によって「エンゲージメントが高い組織を目指す」
 りぶえるの初弾として、▽出産祝い金▽借上寮▽特別療養休暇▽育児休暇--の四つの制度を4月に改正した。目玉は出産祝い金で、何人目の子どもでも一律3万円だった支給額を見直し、第1子は30万円、第2子では50万円、第3子に至っては100万円と大幅に引き上げた。
 7月には第2弾で、26年4月に奨学金代理返済制度を導入すると発表した。奨学金返済によって結婚などライフイベントをためらうことがないよう、社員に代わって会社が完済することで経済的・心理的負担を軽減し、安心して働ける環境を整える。
 これら具体的な取り組みの検討に当たっては内容の手厚さにこだわった。「当社はサブコンの中で決してトップではなく中堅企業。人的資本投資の面では、業界のトップを走っていると言えるようにする」ためだ。
 奨学金を受給する学生の割合が上昇する中、奨学金代理返済制度の導入は、今いる社員の応援にとどまらず、未来の社員を確保する採用にも好影響があるとみる。これまでは「中堅企業なので、学生から見て埋もれることもあった」が、今後はりぶえるをアピールして「当社に興味を持つ母集団の形成にもつなげていきたい」と力を込める。
 社員の反応は上々で、「かなり喜んでもらっている」と手応えを口にする。一方で、第2弾までの取り組みは若手社員が主な対象となるため、「そこから漏れてしまう社員をどう応援するか」が課題だ。24年度に始めた人財統括部による支店巡回で、さまざまな職種や世代のニーズを丁寧にくみ取り、りぶえるの充実を図る姿勢を示す。
 「第2弾までは会社が社員を応援する形だった」とし、今後は「会社に応援された社員が別の社員を応援したり、社員が会社を応援するといった“相互還元型”の取り組みも考えていきたい」と意気込む。

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 (かしわくら・せいいち)1988年3月埼玉県立浦和工業高卒後、同年4月大成温調エンジニアリング(現大成温調)入社。関東支店ファシリティ部長兼大宮サービスステーション所長、副支店長兼営業部長などを経て、2023年4月から本社人財統括部長に就き、25年4月から現職。さいたま市出身。69年12月24日生まれ、55歳。