日建連 協力会社の賃上げ状況調査/全建 5年間で生産性9%向上 | 建設通信新聞Digital

9月16日 火曜日

団体

日建連 協力会社の賃上げ状況調査/全建 5年間で生産性9%向上

 建設業4団体は、2月に首相官邸で開かれた車座対談で申し合わせ事項となった賃金引き上げと生産性向上についても、その後の取り組みの進捗(しんちょく)状況などを報告した=写真。
 日本建設業連合会の宮本洋一会長は、直近の会員企業の実施率が9割超に達した「労務費見積り尊重宣言」に基づく取り組みなどを紹介した上で、技能労働者を直接雇用している会員企業がほとんどないことを勘案し、「協力会社を対象としたフォローアップ調査を11月に行う」と表明した。鉄筋、型枠、とび、土工、左官、電工の各職種を対象に、1次・2次下請けの協力会社が雇用する技能労働者の賃上げ実施状況を調べる。
 さらに、7月に策定した新長期ビジョンにおいて、今後10年での所得倍増を打ち出したことに言及し、「こうした将来目標を建設業全体、そして官民で共有したい。公共工事設計労務単価についても、実態調査の結果を反映させる現行方式を改め、政策的に引き上げていく方式にしてもらいたい」と働き掛けた。
 生産性向上に関しては、「今後5年間で会員企業社員の年間実労働時間を70時間削減し、全産業平均を下回る水準とする計画を12月をめどに策定する」と明かした。
 全国建設業協会の今井雅則会長は「会員企業の9割弱が賃上げを行っているが、6%を超えているのは2割前後にとどまっている」と現状を説明。その原因に「労務費を100%下請けに出せるような受注ができていない」ことを挙げ、「まずは直轄工事で落札率100%になるような施策の検討をお願いしたい。これは、賃金行き渡りのための最初の関門になる」と指摘した。設計労務単価の継続的な引き上げとともに、技能者以外の賃上げのための現場管理費、一般管理費の引き上げも要望した。
 24日の理事会で決定する全建としての生産性向上計画の要点も披露し、「2029年度までに労働生産性を24年度比で9%向上させることを目標に、ICT施工に取り組んでいる会員企業の割合を85%にするなどのKPI(重要業績指標)を定め、PDCA(計画・実行・評価・改善)のサイクルを回しながら会員企業の生産性向上を図っていく」と述べた。このほかのKPIには、施工管理アプリの活用割合90%、電子黒板90%、BIM/CIM40%、受発注者間情報共有システム(ASP方式)70%、ウェブカメラ60%などを掲げる予定だ。
 また、全建が予算執行を担当する国土交通省の新たな補助事業「建設市場整備推進事業費補助金」が1次公募で即完売したことに触れ、「生産性向上には、最近の機器やICT環境が重要になるが、地域建設業の多くは、それらを手に入れるための投資ができない。補助金の予算が一瞬で消化されたように、みんなこのような支援制度を使いたがっている。ぜひ拡充をお願いしたい」と求めた。