クローズアップ・日本建設業連合会事務総長 中原淳氏に聞く | 建設通信新聞Digital

10月11日 土曜日

インタビュー

クローズアップ・日本建設業連合会事務総長 中原淳氏に聞く

【シンクタンク機能を強化/受発注者で共存共栄】
 日本建設業連合会の事務総長(代表理事)就任から2カ月。中原淳事務総長が、日刊建設通信新聞社などのインタビューに応じた。国土交通省時代、建設業行政に何度も携わった中原氏は「どこの部署にいても、ライフワークとして常に建設業界のことを考えてきた。会員企業、そして建設業全体のために、これまでの経験を生かしていきたい」と語る。日建連会員にとって、国交省は最大発注者の一つでもあるため、「遠慮しがちなところもあったと思う」とした上で、「発注者と受注者の関係とは別に、業行政に対しては、日建連としてシンクタンク機能を一層強化し、制度改正などをもっと大胆に主張していきたい」と意気込む。 日建連は7月に、今後10年間に実現すべき方策や目標などを示した『建設業の長期ビジョン2.0』を公表した。「最近は業績の良い企業が多いが、長期ビジョンでも示したように人手不足などは不可避の課題であり、5年、10年後を見据えた布石を今打たないと後々大変なことになる。具体的な施策を現在、日建連内部でも議論しているが、その一つひとつを戦略的に、スケジュール感を持って展開していく」と気を引き締める。
 課題が山積する中、「短期的にはまず、防災・減災、国土強靱化を含め、公共事業の十分な予算確保を要望していく。また受発注者間のウィン・ウィンな関係構築が非常に重要な課題となっている。現在、建設業の人手不足なども背景に、対等な関係への見直しが進んできているが、改正建設業法に基づいて改正される予定の民間建設工事標準請負契約約款の活用などで、適正な契約を維持できるようにしていきたい」と展望する。
 国交省時代に自身も深く関わった建設キャリアアップシステムについては、「今では技能者登録が170万人を超えた。これからが肝心で、いかに活用を促し、またデータベースとして関連する施策の充実につなげるか。例えば、建設業退職金共済制度との連携は、これまでで最も分かりやすいメリットになると思う。企業、技能者にとって、有効なシステムとして機能させるための推進体制を構築する。少なくとも、公共工事ではどんどん義務化をしてほしい」という。
 2024年4月に適用された時間外労働規制への対応も大きなテーマだ。1年半余りが経過した中、「現場の多様性に比べ、かなり画一的な規制となっているため、実情に合わないという指摘が出てきている。労使双方がウィン・ウィンとなる多様な働き方を実現できる、高度化した労働時間規制の在り方をなるべく早く提案したい」との考えを示す。
 また、「中長期的に外国人労働者の問題は避けては通れない」と指摘。「一定程度の生産性向上を実現しても、建設労働者の不足分を全て補えず、外国人材に頼るしかない。国籍を問わず、建設労働者はエッセンシャルワーカーであり、インフラやビル、住宅などを適切に維持するためには必要不可欠で、足りなくなると、日本に住む国民の大半が困る。これまで外国人材の受け入れや教育は個社が努力してきたが、日本全体にとって必要ということであれば、国や自治体とも連携しながら、大規模な研修やターゲットの国を絞った戦略的な受け入れなども検討すべきだろう」
 建設業の持続可能性を確保するためにいろいろな手だてを模索すれど、「やっぱり日本人にたくさん入ってきてほしい」のが本音。少子化が進行する中、「産業間の人材獲得競争を勝ち抜いていくためには、建設業自体がより魅力的な産業にならなければならない。給与や退職金の水準引き上げなどによる新4K(給与・休暇・希望・かっこいい)の実現をはじめ、若者や女性がもっと活躍できる職場環境を整えていきたい」と前を向く。
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 (なかはら・じゅん)1987年3月東大法学部卒後、同年4月建設省(現国交省)入省。官房建設流通政策審議官、国土政策局長などを歴任後、外務省駐ホンジュラス特命全権大使を務めた。2025年8月から現職。座右の銘は『自他共栄』。趣味は旅行、クラシック・ジャズ音楽鑑賞、ワイン、ゴルフ。63歳。