【設計力で未来を変革する/コストありきは過度な簡素化招く/昭和設計 鳥居久人(とりい・ひさと)社長】
建築・水工の両部門とも業績は堅調で、「昨年度の高受注を受けて業務量は多く、特に近年は水工部門の業績が高水準で安定している」と説明する。ただし「建築部門においては、今後の受注環境に不透明感がある」と表情を引き締める。
数年前から顕著になっている人手不足、資材価格や人件費の高騰は、依然として継続の傾向を見せている。「プロジェクトの中断や、施工段階に進めない事態が散見される。さまざまな策を講じても予算が折り合わず、工事発注の時期を見直す案件が増えている」と明かす。
「誰もが事業を進めたい意欲があるのに、環境が整わない。高止まりしている事業費を受け入れ、投資できる業態とそうでない業態に二分されてきているのも現実であり、時代の流れとはいえ、もどかしく思う。民間の設備投資意欲をそぐことになりはしないか」と危惧する。
今年4月に設置した「DX推進室」はBIM活用推進に加え、急速に進歩しているAI(人工知能)など事務所のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の司令塔的な役割を担う。「1年はおろか、半年前と比べてもAIを巡る様相は大きく変わっている。スピード感を持って対応する必要がある」と話す。一方で、「意識がDX偏重になることで建築に対する熱量をそいでしまうようでは、総合設計事務所としての本来の姿を見失ってしまう」とも。
設計事務所と社会との関わり方について、「私たちは建築をつくることにとどまらず、社会との関わりを何よりも大切に考えてきた」と強調する。「1957年に岡本行善が事務所を立ち上げた際、自らの名前を冠することなく時代の名前を掲げたのは、私たちの活動の社会的意義を強く意識していたから。社会資本である上下水道インフラを扱う水工部門との両輪で事業を展開し、その考えを脈々と受け継いでいる。下水道ストックの老朽化が社会課題として広く一般にも認識され、その意義をより強く感じている」と訴える。
自身も「環境や文化、人々の生活を根本から変革する力を建築は秘めている。この視点を忘れ、表面的で一時的な価値判断に偏ることは、私たちの未来を危うくする」との思いから、設計者には「社会に対する重要な役割と使命を改めて認識する必要がある」と考えている。現在のようなコスト高騰が今後も続けば、「コストありきの風潮が一層強まり、その影響で建築そのものが過度に簡素化されてしまわないか」と懸念する。
「だからこそ設計者は、俯瞰(ふかん)的に物事を見る視点を大切にし、その上で社会のニーズや矛盾を真摯(しんし)に受け止め、それらを解決するために知恵を絞り、腰を据えて取り組むことが求められている。建築は私たちの生活や文化、未来を形作る力を持つものであり、設計者が悩み、苦しみ、格闘した中から生み出される建築は、真に人々の心に響くものとなる」と力強く語る。
【業績メモ】
活発な建設市況を背景に、増収増益を確保した。建築部門は文教施設や生産系施設、研究所など官・民バランスよく受注を実現。水工部門も目標を上回る数字を上げ、近年安定した成長を続けている。下水道ストックの老朽化が広く社会課題として認識され、早期の対策が求められる中で「ウオーターPPPやストックマネジメントなど、多様な事業形態への対応を進めている」
建築・水工の両部門とも業績は堅調で、「昨年度の高受注を受けて業務量は多く、特に近年は水工部門の業績が高水準で安定している」と説明する。ただし「建築部門においては、今後の受注環境に不透明感がある」と表情を引き締める。
数年前から顕著になっている人手不足、資材価格や人件費の高騰は、依然として継続の傾向を見せている。「プロジェクトの中断や、施工段階に進めない事態が散見される。さまざまな策を講じても予算が折り合わず、工事発注の時期を見直す案件が増えている」と明かす。
「誰もが事業を進めたい意欲があるのに、環境が整わない。高止まりしている事業費を受け入れ、投資できる業態とそうでない業態に二分されてきているのも現実であり、時代の流れとはいえ、もどかしく思う。民間の設備投資意欲をそぐことになりはしないか」と危惧する。
今年4月に設置した「DX推進室」はBIM活用推進に加え、急速に進歩しているAI(人工知能)など事務所のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の司令塔的な役割を担う。「1年はおろか、半年前と比べてもAIを巡る様相は大きく変わっている。スピード感を持って対応する必要がある」と話す。一方で、「意識がDX偏重になることで建築に対する熱量をそいでしまうようでは、総合設計事務所としての本来の姿を見失ってしまう」とも。
設計事務所と社会との関わり方について、「私たちは建築をつくることにとどまらず、社会との関わりを何よりも大切に考えてきた」と強調する。「1957年に岡本行善が事務所を立ち上げた際、自らの名前を冠することなく時代の名前を掲げたのは、私たちの活動の社会的意義を強く意識していたから。社会資本である上下水道インフラを扱う水工部門との両輪で事業を展開し、その考えを脈々と受け継いでいる。下水道ストックの老朽化が社会課題として広く一般にも認識され、その意義をより強く感じている」と訴える。
自身も「環境や文化、人々の生活を根本から変革する力を建築は秘めている。この視点を忘れ、表面的で一時的な価値判断に偏ることは、私たちの未来を危うくする」との思いから、設計者には「社会に対する重要な役割と使命を改めて認識する必要がある」と考えている。現在のようなコスト高騰が今後も続けば、「コストありきの風潮が一層強まり、その影響で建築そのものが過度に簡素化されてしまわないか」と懸念する。
「だからこそ設計者は、俯瞰(ふかん)的に物事を見る視点を大切にし、その上で社会のニーズや矛盾を真摯(しんし)に受け止め、それらを解決するために知恵を絞り、腰を据えて取り組むことが求められている。建築は私たちの生活や文化、未来を形作る力を持つものであり、設計者が悩み、苦しみ、格闘した中から生み出される建築は、真に人々の心に響くものとなる」と力強く語る。
【業績メモ】
活発な建設市況を背景に、増収増益を確保した。建築部門は文教施設や生産系施設、研究所など官・民バランスよく受注を実現。水工部門も目標を上回る数字を上げ、近年安定した成長を続けている。下水道ストックの老朽化が広く社会課題として認識され、早期の対策が求められる中で「ウオーターPPPやストックマネジメントなど、多様な事業形態への対応を進めている」













