一定範囲内の契約金額の変更などについて、議会の承認を経ずに首長が決定できる「専決処分」規定が、都道府県・政令市・県庁所在市の約4割で未設定であることが、全国建設業協会(今井雅則会長)の調べで分かった。この現状について、全建幹部は「まだまだ少ない」と指摘。中東情勢による影響を含め、工事請負代金の変動リスクが依然としてつきまとう中、価格転嫁の円滑化に寄与する専決処分の普及の必要性を説く。未設定の都府県などに所在する建設業協会や会員企業には、それぞれの地元での要望活動を展開してもらいたい考えだ。
全建が普及を呼び掛けているのは、地方自治法第180条に規定する専決処分。軽微な内容で、あらかじめ議決によって指定(委任)している事項が対象となる。議会への報告は求められるが、議会に議案を上程した上での承認(議決)手続きは必要ない。
全建の調べによると、7月現在で、専決処分が行える都道府県は47団体中25団体(全体に占める割合=53.2%)、政令市・県庁所在市は51団体中34団体(66.7%)で、合計は98団体中59団体(60.2%)となっている。直近の2026年度調査では、新たに兵庫県が加わったという。
全建が調査を開始した22年度と比較すると、専決処分ができる自治体は52団体から59団体に増え、割合は53.1%から60.2%に上昇した。一方、政令市・県庁所在市は23年度以降、34団体のまま横ばいで推移し、都道府県も直近2年間は、各年度1団体の増加にとどまっている。現時点で、専決処分の範囲が定められていない自治体は、39団体と全体の約4割を占めており、取り組みのさらなる広がりが課題となっている。
首長が専決できる範囲は自治体によって異なるが、契約金額の10%、5%以内の変更といった率ベースのケースや、1億円、5000万円以内といった額ベースの条件などがある。具体的には、「契約金額の1割を超えない範囲」(北海道)、「議決した契約金額6億円以上の10%以下かつ差額が6億円未満の契約変更」(神奈川県)、「増減する契約金額が変更前の金額の10分の1以内」(新潟県)、「1億円を超えない範囲での変更」(島根県)、「契約変更の増減額が5000万円以下および工期・納期の延長が2カ月以内」(熊本県)などといった範囲設定が行われている。
地方自治体で、いわゆる議会案件として発注される比較的大規模な建設工事は、落札者といったん仮契約を結び、その後に開催される定例議会での承認を経て、正式に契約締結されるのが一般的。議会案件に金額変更の必要が生じた場合は、改めて契約変更議案を議会に諮り、承認を得ることになる。
資材価格や労務費の上昇に対応するためのスライド条項や設計変更の適用などに当たり、全体額に比べて軽微な増額を行う場合も、原則として議会承認が必要となるが、専決処分が可能であれば、議会での手続きを待たずに契約変更が行え、スムーズな価格転嫁を実行できる。
全建が専決処分の範囲設定を訴えるのは、時間的な観点だけではない。業界関係者によると、比較的少額な変更のために要する議会手続きの労力や手間を嫌い、そもそも議案の上程に後ろ向きになる発注部局担当者もいるという。積算などを担う自治体の技術職員不足も叫ばれる中、円滑な変更を可能とする態勢の充実が求められている。
このほか、専決処分には、地方自治法第179条に基づくものもある。時間的に議会の招集を待てない緊急な場合などに、行政運営の遅れや滞りを防ぐため、例外的に首長が議会の議決に代わり意思決定する。災害対応のための補正予算編成などに使われる。
専決処分の範囲を定めていない自治体は次のとおり(7月現在、全建調べ)。
=都道府県=
▽青森▽秋田▽山形▽千葉▽東京▽長野▽岐阜▽静岡▽三重▽富山▽京都▽奈良▽和歌山▽岡山▽徳島▽愛媛▽福岡▽佐賀▽大分▽宮崎▽鹿児島▽沖縄。
=政令市・県庁所在市=
▽山形▽水戸▽前橋▽さいたま▽千葉▽甲府▽岐阜▽金沢▽京都▽堺▽神戸▽奈良▽鳥取▽松山▽福岡▽北九州▽佐賀。
