作家の川上弘美さんがエッセイで「博物館や美術館の建物の中を逍遙(しょうよう)する人たちは、現実感が欠けてみえる。自分もまた、その場所で現実感を失っているのかもしれない」と記していた。展示物を見るのはもちろん、建物の中を歩くことが好きなのだという◆美術館は建物そのものが芸術品と感じるものも多い。ユネスコの「世界で最も美しい美術館」に選ばれた広島県と香川県の美術館を訪れた際、異次元の感覚を抱いたことを思い出す◆芸術の秋を迎えたが、国立美術館が運営する複数の施設で10月以降、観覧料が値上げになるとの報道があった。料金が倍以上となる事例もあるという◆物価高で仕方のない面もあるが、設計、建設とさまざまな人が創意工夫して完成した施設が身近で楽しめるものであってほしい。
