
熊谷組は施工中の山岳トンネル工事で、国家プロジェクトで開発が進む無線電子雷管に自社の遠隔装てんシステムを組み合わせ、装薬・発破作業を機械化する実証試験を実施した。起爆装置の無線電子雷管を取り付けた親ダイなど、発破に必要な材料を全て機械装てんした。無線起爆のため、通常必要な配線作業が不要で、壁面崩落のリスクがある切り羽直下に人を入れずに作業できた。同社によると、人が切り羽直下に入らず装薬・発破工程が完結したのは国内初という。
国土交通省近畿地方整備局発注の「大野油坂道路新下半原トンネル工事」で実証した。無線電子雷管「ウインデット2システム」を使い、ニシオティーアンドエム(大阪府、北俊介社長)、キヨモトテックイチ(宮崎県、清本康夫代表取締役)と共同開発した機械装点システムを適用した。
実証作業は、中心部を掘削する「芯抜き」で実施。中心に穿孔(せんこう)した10穴に装薬し、数百メートル離れた場所から起爆した。発破の精度は、技能者が手作業で装薬した場合と遜色がなかった。
開発したシステムは、装薬用のユニットをドリルジャンボのアーム部分に取り付けて運用する。オペレーターは、ドリルジャンボの操作室からアームを動かし、ユニットの先端を切り羽の穴に誘導する。位置を決めてボタンを押すと、自動で親ダイ、マシダイ、アンコと呼ばれる充てん材が、数秒間で全て装てんされる仕組みだ。
山岳トンネル工事の労働災害の多くは、切り羽直下での手作業となる装薬工程で発生する。このため厚生労働省は2024年3月に「肌落ち災害防止対策に係るガイドライン」を改正し、切り羽の最上部から後方45度の範囲を「特段の配慮を必要とする範囲」と定め、立ち入りを避けるよう指導している。
ただ、熊谷組担当者によると装薬作業は現在もスタッフによる手作業が主流だという。同社の場合、過去に発生した切り羽直下での重大災害を機に、機械化が難しい有線式親ダイの装てんや配線作業を除いて、装薬工程の機械化を進めてきた。今回、開発中の無線電子雷管を使ったことで、事故の多い装薬作業における切り羽直下の無人化に成功した。
開発に携わる同社土木事業本部の杉本憲一トンネル技術部長は「現場所長も経験してきたが、切り羽直下に人がいないのは安心感が全然違う。ただ、本格実装に向けては道半ばだ。これからも技術開発を進める」と話した。
