2032年度の事業完了を目指す千里中央地区(大阪府豊中市)の再整備が、建設資材費の高騰や建設人材の不足などを背景に足踏みしている。地権者やデベロッパーなどで構成する千里中央地区活性化協議会では、事業推進に向けた協議を継続。千里阪急ホテルの営業終了や千里セルシーの解体工事の進捗(しんちょく)状況を共有したものの、事業の具体化には至っていない。豊中市は補助制度の創設などを通じ、民間開発の後押しに乗り出している。
千里中央地区は、1970年の日本万国博覧会開催に合わせて北大阪急行電鉄の仮設駅が設置されて以来、商業施設が相次いで開業。81年には大阪モノレールの駅も設置され、北摂地域の拠点として発展してきた。
一方、まちびらきから50年以上が経過し、多くの施設で老朽化が進んでいる。よみうり文化センターは2015年、商業施設「SENRITO」に建て替えられた。地区の中心的施設だった千里セルシーは18年6月に閉館し、大丸ピーコックストアの後継施設として営業していたオトカリテも23年4月に閉館した。
豊中市は14年3月、「千里中央地区活性化ビジョン」を策定した。官民協働による合意形成の場として、同年7月には千里中央地区活性化協議会が発足。19年3月に公表した改定版では、千里阪急の建て替えや千里セルシー跡地での大型商業施設開発、千里阪急ホテル跡地での交流空間整備などを掲げた。
現在、千里セルシーの解体工事は進んでいるものの、20年以降は新型コロナウイルス禍や建設費の上昇などが重なり、協議会での具体的な事業協議は停滞している。
再整備に対する期待は、建設業界だけでなく地域住民の間でも大きい。市が3月に公表した経済波及効果の試算によると、施設整備による効果は4900億円を超え、固定資産税や市民税の増収も見込まれる。
市は事業を後押しするため、2月に新たな補助制度を創設した。商業、オフィス、宿泊などの機能を備え、地区の魅力向上に寄与する大規模開発に対し、最大35億円を補助する。
対象は、千里中央駅周辺地域都市再生緊急整備地域で実施する事業。2万平方メートル以上の商業機能、3000平方メートル以上の業務機能、集会場機能を備えた7000平方メートル以上の宿泊機能などが要件となる。併せて、1000平方メートル以上の一時退避施設を整備する必要がある。
市の担当者は「32年度までに完成する施設に限定しているが、事業が前に進むことを願って制度を創設した。まちづくりに資する機能を備えた開発を期待している」と話す。
市は22年度からワークショップも開催し、市民の意見を取り入れながら、千里中央地区の将来像を探っている。担当者は「市民一人ひとりに、千里中央で『何をしたいか』『どう過ごしたいか』を考えてもらいたい」と語る。
千里阪急ホテル跡地の開発を担う阪急阪神不動産の担当者も「千里中央は阪急グループにとって重要なエリアだ。高品質な開発を進めたい」と前向きな姿勢を示す。
24年3月には北大阪急行電鉄が箕面萱野駅まで延伸し、千里中央駅は終着駅ではなくなった。乗降客数は減少しているものの、交通経済学を専門とする宇都宮浄人関西大教授は「沿線には大阪大学のキャンパスもあり、都市としての価値はむしろ高まっている」と指摘する。
終着駅から沿線拠点へと役割が変化する中、千里中央にどのような機能を持たせるかが問われている。市の支援策と民間事業者の開発意欲、市民参加のまちづくりをどう結び付けるか。事業の具体化に向けた官民の取り組みが続く。
協議会の参加メンバーは次の通り。
▽朝日新聞社▽イオンモール▽エイチ・ツー・オー リテイリング▽大阪高速鉄道▽信用保証サービスセンター▽大阪府タウン管理財団▽北大阪急行電鉄▽ケネディクス・オフィス投資法人▽ザイマックス関西▽シップヘルスケアエステート▽豊中市千里地域連携センター▽阪急電鉄▽阪急阪神不動産▽阪急阪神ホテルズ▽ヤマダ電機▽読売新聞大阪本社▽大阪府▽豊中市▽大阪ガス(オブザーバー)▽関西電力(同)▽都市再生機構(同)▽NTT西日本(同)▽阪急バス(同)。

