世界各国の企業が自社の取り組みを紹介するセッション・クラスは700コマ以上におよび、日本からは、厳正な審査を通過した7企業が発表者に選定された。計11コマの開催は過去最大で、オートデスクの清水ヒデブランド&コミュニケーションズ責任者はその理由を、「世界的に日本の取り組みが注目されている表れでは」と分析する。約1万人が集まったアンドリュー・アナグノスト社長兼CEOによるオープニングセッションでも、ヤマハの事例が映像で大々的に紹介されるなど、日本が注目を集めていたことは間違いない。
セッションで清水建設は、オートデスクのBIMソフト「Revit」を活用した3次元配筋施工図の自動生成ツールを紹介した。BIMから断面を切り出すだけで配筋施工図を作成でき、BIMを修正すると配筋施工図も自動的に更新される。
従来手法では、二次元基本設計図と詳細設計情報から口頭でCADオペレータに図面作成を指示しており、「本当に大変な作業だ」と開発に携わった宮岡香苗氏は話すとともに、「不規則な鉄筋の配置にも柔軟に対応できるようなパラメーター設定を考え、開発を進めた」とポイントを解説する。設計断面を多く切り出せるようになったことで設計が効率化し、使用鉄筋重量の削減にもつながった。
さらに、手作業で行われていた照査作業を自動化し、時間と労力の大幅な削減を実現。これまで、配筋施工図の照査や修正には多くの人手が割かれており、設計人口の約4割がこの業務に費やされていたという。ある道路の設計施工事例では、2万枚の図面を1年半もの時間をかけてチェックしたという話があるほど、多大な労力がかかっていたが、今回のツールにより一瞬にして結果が確認できるようになった。
ジャカルタの地下鉄工事で導入し、CAD図面が一枚もないという状態をかなえ、従来の施工図作成プロセスと比較して、施工図作成業務が5割、図面照査業務が7割効率化した。これにより、3駅同時施工が実現。今後は、「ほかの現場にも取り入れる方向で検討を進めている」と同社松下文哉氏は語る。
設備業界にもBIM導入が広がり始めており、2023年1月に発足した設備BIM研究連絡会には9社が加盟する。セッションでプレゼンテーションした同会メンバーの高砂熱学工業は、設備工事のBIM標準化とRevit利用環境の整備を進めているほか、BIM関連データの活用による生産性向上・付加価値創造に精力的に取り組んでいる。
セッション後に取材に応じた齋藤英範DX戦略部長兼技術本部技術統括部BIM推進室長は「会社として従来のCAD方式からRevitへ移行しようと取り組んでいる。試行のフェーズは卒業していきたい」と思いを語る。普及のためには、「BIMを使って一定の成果を示していくことが大切だ」と話すとともに、「CADで業務が成り立っている人に対してその効果や利便性を発信することが完全BIM化への第一歩だ。デジタルで処理できる部分を増やしていきたい。BIMの目的は3Dモデルをつくることではない」と力を込める。