正確・緻密な測量実現
ドローン測量をより正確に、より緻密に――。ドローンやレーザースキャナで撮影した情報をもとに3次元設計図面の制作などを手がけるアース・アナライザー(荒木寿徳社長)は、自社開発の自動航行ドローンを使った測量事業を展開している。自動航行だからこそ可能な精度の高い3DモデルをBIM/CIMと連携させて、設計施工から維持管理まで一気通貫のBIM/CIM実現を後押しする。「ドローン測量や点検業務は通常、操縦者の技量によるところが大きい。勾配が急な法面や、垂直壁面といった条件では上空からの自動航行計測だけだと測量の精度にムラが生じ、データに『抜け』が生じることがしばしば起こる。そのため斜面や対象物に一定距離で計測することが求められるのだが、マニュアル操作では空中写真測量のラップ率などが担保できない。だがドローンが自動的に位置を特定し、一定のコースを飛行する立体的な自動航行が可能であれば対象物に正対してデータ収集するので、操縦者のレベルに左右されず、何より安全に測量・点検することができる」と荒木社長は自動航行の利点を強調する。
同社が最初に開発した「アナライザー01」を使った測量事業を、2022年から本格化させた。法面やダムの点検など、これまでに国土交通省(近畿地方整備局)や西日本高速道路(NEXCO西日本)、京都府の発注工事など100を超える現場で既に活用されている。その一つ・大阪府高槻市にある新名神高速道路の橋脚建設現場では、元請け企業の錢高組から依頼を受けて、同社が施工した16基の橋脚を対象に3次元測量を実施し、3Dモデル化した。さらに点群データで作成した3Dデータを設計時のBIM/CIMデータと重ねあわせることで、橋脚の施工状況を明確に確認できるようにした。同現場の橋脚は高さが40mを超えるため「地上からのレーザースキャナ照射では点群が薄くなってしまう」のが難点だった。その問題を克服するため、アナライザー01による測量が行われた。測量対象からの距離・間隔を常に一定に保ち航行できる高精度自動航行ドローンだからこそ点群の密度にムラなく、高精度で繰り返しデータ収集できる。測量精度についても「誤差は全て数mm程度におさまっている」と荒木社長は自信を見せる。「設計時の3Dモデルと点群データから得られた3Dデータを重ね合わせることで、発注者も下部工の施工状況を即座に把握し、上部工の施工者に正確な情報を伝達することが可能になった」と意義を強調。発注者であるNEXCO西日本からも高い評価が得られたと説明する。
今後同社が力を注ぎたいと考えているのが、インフラメンテナンスの領域だ。ただし長大橋の桁下部やトンネルなどは、ドローンの自動航行を可能にするGNSS(全球測位衛星システム)信号が届きにくいことが多い。20年に開発した「アナライザー02」は、非GNSS環境下でも自動航行できるドローンを実現したものの、測量対象の周囲に航行支援のためのセンサーを別途配置する必要があった。そこで「センサーが領域内に入ったドローンをキャッチしてドローンの位置を確定させる、そのアルゴリズムをドローン自己位置計算に応用しIMU(慣性計測ユニット)と連動させることで周囲のセンサーを必要としない」新型機・アナライザー05の開発に取り組み始めた。「SARUTAHIKO(サルタヒコ)」と銘打ったこのプロジェクトは、長大橋への適用も可能な世界初の完全自動航行による橋梁点検専用ドローンを目指している。通信技術分野のスタートアップ・iシステムリサーチ(京都市)や徳島大理工学部との共同事業で、兵庫県やNIRO(新産業創造研究機構)からの支援も受けている。開発は現在大詰めを迎え、近く熊本県玉名市の橋梁で実証実験を行う予定だ。22年の航空法改正を受け、人がいる場所で操縦者がドローンを直接目視しなくても飛ばすことができる「レベル4」が解禁された。ただ現時点で、このレベル4の基準を満たすドローンは国内にほとんどないのが実情だ。それでも「目視外飛行が可能な機体として認定してもらえれば、いずれは明石海峡大橋のような長大橋でも活用が期待できる」と荒木社長は前を向く。「これまでのドローン測量はスピーディーであることを求められた。これからはスピードだけでなく正確さと精密さが一層重要になる。高精度を実現するシームレスドローンで、建設現場のDXを後押ししたい」。