オートデスクのBIMソフト『Revit』を軸とした設計プロセスの確立に乗り出した千代田エクスワンエンジニアリングのライフサイエンスプロジェクト(LSP)本部では、建築、設備電気、生産設備の各ユニットが円滑なデータ連携の環境整備を本格化している。坂本昌祥LSP本部副本部長は「社内では他のユニットとの連携を見据える意識が着実に広がっている」と語る。
建築ユニットは、LSP本部の前身となる旧千代田テクノエース時代から先行してRevit活用を進めてきた。建築セクションの竹中幸智子氏は「最近は月1のペースで各部門からの相談が舞い込むようになった」と話す。社内ではLSP本部のBIM活用が進展する状況に刺激を受け、エンジニアリング(ENG)本部もBIM活用に乗り出し始めた。建築ユニットにはパラメーターの設定方法など基礎的な問い合わせだけではなく、BIM活用のより実践的な相談も出てくるようになった。
医薬品、食品、化粧品関連の工場や研究施設を手掛けているLSP本部では、設計段階から建築、設備電気、生産設備の3ユニットが密接に連携しながらプロジェクトをまとめ上げている。坂本氏は「3ユニットは施設の与条件を踏まえながら、連携して建物のプランニングを進めている。親和性の高いRevitを軸にツールの統一を図ったことで、より迅速にデータの共有ができるようになった」と説明する。
生産設備ユニットでは、建築と設備電気ユニットがRevitを標準ソフトとして位置付けたことを踏まえ、将来的にどのツールを選択すべきかを入念に検討してきた。最終的にオートデスク汎用(はんよう)CAD『AutoCAD』のプラント設計に特化した『Plant 3D』を採用した背景には、Revitとの親和性に加え、海外とのデータ共有を考えた場合、国産ソフトでは対応が難しいとの判断があった。
磯誠知セクションリーダーは「原薬工場は建物よりも製造設備が主体となり、装置レイアウトやプロセス配管設計を先行させながら建物との空間調整を行う。限られた空間を使って効率的なプランニングができるかが強く求められる」と説明する。現在はPlant 3Dの運用について検証しているが、近い将来には「建物(Revit)モデルと生産設備(Plant 3D)モデルを統合する流れを確立したい」と強調する。
設備電気ユニットでは、RevitのMEP(機械・電気・配管)機能を導入し、環境整備を本格化している。大山龍一ユニット長補佐は「建築ユニットと双方向で密な設計諸元データのやり取りを進めていく上でも、Revitに統一することが最良の選択だった」と考えている。設備工事会社各社がRevitの標準化に向けて設備BIM研究連絡会を立ち上げた動きも後押しとなった。
医薬品関連施設の設計に必要な空調・衛生設備の部品データ(ファミリ)は現時点で50点を整備済みだが、「これを25年度中に150点程度まで拡充することでより円滑に活用できるようになる」と強調する。建築の部屋情報を設備のスペースに流す仕掛けもオートデスクのプログラミングツール『Dynamo』で実現しており、これを応用する形でコンセントや照明などの自動配置も確立していく方針だ。
LSP本部では、建築ユニットを起点に設備電気ユニットや生産設備ユニットが密にデータ連携する流れが整いつつある。坂本氏は「BIMを使い、各ユニットの設計を可視化し連携させることで全体調整は円滑に進んでいる。何よりもオートデスクの手厚いサポートがその下支えになっている」と付け加える。