【記者座談会】名古屋駅地区開発が活況/経産省の40年シナリオ | 建設通信新聞Digital

5月17日 土曜日

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【記者座談会】名古屋駅地区開発が活況/経産省の40年シナリオ

◇リニア起爆剤に沿線地域活性化を期待

名鉄らによる再開発の効果イメージ


A リニア駅が設置される地域では、まちづくりが活況を呈している。ターミナル駅となる名古屋駅では、どんな計画が検討されているのかな。

B 地元私鉄の名古屋鉄道が3月に名古屋駅地区再開発計画を発表した。名鉄都市開発などと名鉄百貨店本館や名古屋近鉄ビルなどがある敷地に延べ床面積約52万㎡の複合ビルを建設する。施設内には商業施設やオフィス、ホテル、バスターミナルなどを配置する計画だ。2026年度に既存施設の解体工事、27年度に複合ビル建設に着工する予定としている。

C 名鉄名古屋駅は段階的に4線化する。その際には、中部国際空港へのアクセスを強化するために専用の「空港アクセスホーム」も設置する。名古屋駅地区再開発の投資額は名鉄だけで約5400億円を見込んでいるという。

D このほかの計画として、5月7日には名古屋商工会議所が「スーパーモビリティハブ構想」を提言書にまとめ、愛知県に提出した。「空飛ぶクルマ(eVTOL)」やドローンなどの次世代エアモビリティー社会実装を推進する内容で、35年ごろの実現を目指している。

B 名古屋市は25年度後半から新たな路面公共交通システムSRT(スマート・ロードウエー・トランジット)の東西ルート(名古屋駅~栄)の運行を始める。市は、SRTは単なるバスではなく、都心部の価値を高め、にぎわい拡大を図るまちづくりに寄与するとPRしている。

D リニア中央新幹線は品川~名古屋間を最速40分でつなぎ、他に類を見ない速さで人を運ぶ。ビジネスや観光など多方面での経済効果は大きい。名古屋~大阪間も含め、リニアを起爆剤に、沿線地域を中心として日本全体が活性化するようなまちづくりの展開を期待したい。

◇建設業は高度化したエッセンシャルワーカーに

A 話は変わるけど、経済産業省が40年のシナリオ(将来見通し)をまとめた。

E 「40年200兆円」の官民目標を踏まえた国内投資拡大と、AI(人工知能)やデジタル技術の変革によって産業構造転換が実現できれば、40年の名目国内総生産(GDP)は975兆円に増えると推計した。

F 産業構造を大きく三つに区分した場合、建設業を含むエッセンシャルサービス業は、省力化・デジタル化で生産性が向上して、賃金は製造業など他産業に追いつくように上昇すると見込んだ。産業としての雇用は、省力化・デジタル化を使いこなし、現在よりも高い賃金を得る、高度化したアドバンスト・エッセンシャルワーカーとしての受け皿になる。ただ、エッセンシャルサービス業としての人数は増えないようだ。

E いまは製造業と情報通信業・専門サービス業など、建設業などエッセンシャルサービス業の三区分としての公表だが、建設業など33の産業別に労働生産性、賃金、国内投資の内訳、輸出入の数値を示したシナリオを5月末以降に公表する予定と聞いている。

F シナリオでは、おおよその数値だが、建設業の1時間当たり名目雇用者賃金(一人親方除く)は、21年の三千数百円が40年に五千数百円程度になるとみられる。40年の建設業の1時間当たり名目労働生産性も、21年の倍程度の6000円超になるというが、全産業平均の1万0260円には遠く及ばない。

E 40年将来見通しからは、建設業など現場を支えるエッセンシャルワーカーの人手不足はより深刻化する。このため、建設業でもアドバンスト・エッセンシャルワーカーの確保と育成が急務になるだろう。デジタル技術の活用を含むスキルを正当に評価し、実際の処遇改善につなげてほしい。

 

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