【鹿島道路のICT普及】労働人口減少・働き方改革への突破口に かぎは"エキスパート人材"の育成 | 建設通信新聞Digital

5月2日 木曜日

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【鹿島道路のICT普及】労働人口減少・働き方改革への突破口に かぎは“エキスパート人材”の育成

3DMCによるベースペーバ工法で路盤材を敷き均す

 「全支店へのICT普及に向けてスピード感を持って対応する」と、鹿島道路の毛利和久生産技術本部工事部長兼ICT施工推進室長は力を込める。同社は国内で初めて舗装工事に3次元マシンコントロールを導入するなど、これまで積極的にICT活用に取り組んできた。今後は新設したICT施工推進室のもと、業務効率化や担い手・休日確保などの課題克服に向けて、全社を挙げてICT活用を推進する。
 同社が情報化施工に着手したのは2000年。揚水式発電所の上部調整池の舗装で採用したアスファルト表面遮水壁工法「アスファルトフェーシング」に導入した。従来は斜面に大量の丁張りを打つ必要があり手間が掛かっていたため、トータルステーションを活用した3次元のマシンコントロールによる施工に取り組み、工事の合理化を実現した。橋梁の舗装では、壁面などに引かれたラインを光学センサーで取り込み、内部処理でラインを検知して、ラインを基準に高さを制御する舗装用レべリングセンサー「ラインリーダ」を独自で開発するなどの強みも持っている。
 同社はこれまで着々とICT活用の実績を積み重ねてきた。そうした流れをさらに加速するため、生産技術本部内の各部署で活動していた情報化施工のワーキンググループを一本化し、7月にICT施工推進室を立ち上げた。5年後のICT活用の目標を示したロードマップも策定し、毛利氏は「少子高齢化に伴い就業人口が減少するとともに社員や熟練工が減少している。そのためICTによる平均化と定量化が不可欠となる」と狙いを明かす。

アスファルトフィニッシャーを制御

 ICTの標準化に向けて目指すのはICT活用件数の増加だ。17年3月期はICT活用件数が約130件だったが、18年3月期は前期比3割増を目標に定める。7月には3日間にわたりICT施工技術研修会を実施したほか、各支店での周知会や見学会にも取り組み、さらなる活用と社内への浸透に準備を進めている。
 ICT活用経験がある技術者を増やすことも推進室の柱の1つ。現在、活用経験のある技術者は社内で4-5割だが今期は6割まで高めることを目標とし、5年後は全技術者への拡大を目指す。並行して取り組むのがICTを使いこなせるエキスパート人材の育成だ。さまざまな管理技術を検証して社内に周知するモデル現場と、そこでの実地研修を計画しており、5年後には5割の技術者のエキスパート化を見据える。毛利氏は「本店に集めて教育するとともに、現場で支援していくことが必要」と人材育成の重要性を指摘する。
 IoT(モノのインターネット)の活用では、工事で取得したログを1つのプラットフォーム上にまとめるとともに、AI(人工知能)の活用を見据え、機械学習向けの要素もクラウド上に集積し、これまで並行して存在していたデータの結合を試行する考えだ。AIやロボットなど先端技術の現場導入を実現するため異業種との協業も視野に入れて開発を進めていく。

情報化施工研修会を通し人材育成を進める

 毛利氏は「従来どおりの施工でも工事はできるが、各支店とも現場でICTを使っていかないと普及しない」と強調し、支店長が集まる会議では推進室として、将来の担い手確保を始めICT活用の狙いと意義を説明する。工事主任や係長など約60人が集まった研修会では、ほとんどの参加者から「ICT活用に取り組む必要がある」との感想が寄せられ、「かなり効果があった」と手応えを語る。見据えるのはICTの活用によるゆとりの創出であり、毛利氏は「働き方改革に真剣に取り組んでいかなければならない。ICTを標準化して5年後には4週8休を目指す」と意気込む。

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