【職人・法人向け商品の再強化】快適ワーク研究所立ち上げ/ワークマン専務 土屋哲雄氏 | 建設通信新聞Digital

7月7日 月曜日

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【職人・法人向け商品の再強化】快適ワーク研究所立ち上げ/ワークマン専務 土屋哲雄氏

 作業服トップメーカーのワークマンが“ワーク強靱化宣言”を旗印に職人向け商品の再強化を図っている。競争激化の中で、競合他社と比べて半値以下の価格帯や顧客ニーズにかなう新機能で攻勢を強める。一般アパレルの展開を通じて得た知見も加わり、独自の「ワークカジュアル」の確立も目指す。「作業服=ワークマン」の誇りとともに、常に現場の職人に寄り添い、課題解決に貢献してきた同社がワーク回帰で新境地を見いだす。事業戦略の中枢を担う土屋哲雄専務に今後の事業方針や展望を聞いた。

土屋専務


–ワーク強靱化とは

 「これまでプロ用ワークウエアのノウハウを転用した機能性の高い一般向けアウトドアやカジュアルウエアの新機軸を打ち出し、製品開発のリソースを集中してきた。『♯ワークマン女子』『Workman Colors』と展開し、軌道に乗ったものの、作業服中心の『ワークマン』と『WORKMAN Plus』の既存店向けの作業服開発が手薄となり、作業服の売り上げが伸び悩んでいた。このため、開発要員を約8割までワークウエアに戻し、本業の作業服強化に軸足を移している」

「ZERO-STAGE」は機能性に優れる高級路線の製品


 「投入中の25年春夏企画では、ワーク強靱化の新製品として柔らかさやストレッチ、高い強度が特徴の『ワンダーストレッチ』シリーズを打ち出し、上下セット製品は従来価格から1000円値下げした3400円で販売している。世間一般では資材高など物価高騰にあえぐ中、当社がリーズナブルな価格提供を実現できるのは、一つに量産体制の強化が挙げられる。一般的なメーカーの1モデルの年産量の5倍となる50万着以上を生産することで、スケールメリットによるコストダウンを図っている」

 「加工貿易(原料を輸入調達し、製品に加工して輸出する)の活用も、当社の低価格販売を大きく支える一つ。従来は海外メーカーから完成品を購入していたが、当社自ら中国の素材メーカーから生地や副資材などを調達し、東南アジアにある製造ラインを1年間分借りきって、加工賃のみを支払う生産体制を敷くことで、これまで発生していた管理費など製造コストの削減につながっている。中国で手当てした輸入原材料に関税をかけずに留保のまま、東南アジアで加工して日本に輸出するといった保税制度を利用していることもコストメリットを発揮している」

–25年春夏の景況感は

 「例年だと気温が最高潮に達する7月末から暑熱対策アイテムは売れ行きが強まるが、今年は厚生労働省が企業に対して熱中症対策を罰則付きで義務化する法律を施行したこともあって、6月から活況を呈している。冷却を担うペルチェデバイスを5カ所に取り付けた冷房服『ペルチェベストPRO2』は、生産した十数万個が既に完売した。ファン付きウエアとの組み合わせ提案でも需要が期待できる。熱中症リスクに対応して気化冷却や透湿など14種類の機能を備える『XShelter 暑熱軽減ウエア』のほか、暑熱環境下での運動中の熱中症リスクを2段階で通知する『アラート機能付き暑熱バンドPRO2』は、熱中症対策を義務化する法律でも重要視する“現場での適切な対応の実施”に対応し、定価1900円と手軽に暑熱対策できるアイテムとして好評を博している」

 「ワーク強靱化と並び“快適ワーク”もキーワードの一つとなる。自社内に『快適ワーク研究所』を立ち上げ、建設業界で働く職人の最も多い悩みである腰痛に対応した腰ベルト付きパンツの提案など労働寿命の延長を目的とした製品を開発している。日本赤十字看護大学付属災害救護研究所の知見を取り入れた共同開発にも意欲的に取り組んでおり、25年秋冬企画では快適な着心地を保つ温度や湿度をコントロールしたパンツを打ち出す予定だ」

–法人向けの展開は

 「当社は日本全国に構える店舗を通じた個人向け作業服の販売に加え、法人営業部も立ち上げており、法人向け販売でも中期的にはトップシェアを目指している。大手飲食チェーンやガソリンスタンド、自動車工場、中小建設業など採用実績も多岐にわたり、近年ではリクルート効果を狙ったワークウエアの刷新も増加し、入職者不足で悩む建設業界からの問い合わせも少なくない」

 「法人向け好調の背景には、制電やセメントをはじく超撥水(はっすい)など業界特性に沿った機能を実装しつつ、加工貿易に伴うコストパフォーマンスが大きな訴求力につながっている。そこにWorkman Colorsの展開で培った一般アパレルのデザイン性を加味することで、格好良いワークウエアを体現できていると考えている」

EXILEのTAKAHIROさんが「ZERO-STAGE」のモデル・監修を務める


 「今まで欠けていたハイスペックな企業用の作業服にも本格参入していく。3月から展開中の、EXILEのTAKAHIROさんがモデルと監修を務める新ワークウエアブランド『ZERO-STAGE』がその一例となる。繊維関連製品の開発などを手掛ける帝人フロンティアの高級スポーツ用素材を使用し、吸水速乾をはじめ通気性、遮熱、UVカット、制電などの機能性を備える、これまでの製品とは一線を画したワークマンならではの高級路線のジャケットやパンツを販売している。ちなみにTAKAHIROさんは現場で働きながらオーディションを受けていた時代もあり、ワークマンは身近な存在だったそうだ」

–今後の展開として

 「機能性を追求した開発と並行してそれを裏付けるエビデンスの確保も欠かせない。これまでも東北大学からの委託研究を通じて、専門的な見地を持つ研究者とコラボレーションして機能性を立証することで、製品の付加価値向上につなげてきた。販路拡大も検討中で、日本国内にとどまらず海外出店に向けて準備を進めている」

 「例えば台湾は世界的にも独自のファッション文化が根付き、当社のシルエットなどを意識した普段使いできるワークカジュアル製品が普及する可能性は十分あり、一般客をターゲットにしても一定の需要を見込んでいる。日本よりも気温や湿度が高い過酷な労働環境とあって、当社の機能的かつ安価な作業服のニーズも高いとにらんでいる。海外には当社が展開するような作業服は流通していないと考えているだけに、建設現場で広がる可能性もあると思う。ワーク強靱化は海外展開に向けても大きな役割を果たすと言える」

 「Workman Colorsなどの一般アパレル事業を経験して思うのが、既存の作業服は格好良さがまだまだ足らないということ。作業服で従業員の労働意欲を高めたり、リクルート活用する。まだまだ改善の余地がある。私は『格好良い=誇り』と考えており、今後も“プライドウエア”にふさわしい、業界を震撼させるような作業服を発信していく」

 

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