【JICAと連携し村落開発】若手社員をベナンに派遣/戸田建設 | 建設通信新聞Digital

7月9日 水曜日

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【JICAと連携し村落開発】若手社員をベナンに派遣/戸田建設

 戸田建設は今夏、アフリカ西部・ベナンに入社3年目の事務系若手社員を初めて派遣する。受注産業という特性上、継続的な海外赴任の機会が限られる中、社会課題へのアプローチを通じて国内外で自律的に活躍できる人材の育成を目指す。今回の派遣は、国際協力機構(JICA)との連携派遣制度を活用。第1期隊員として現地に向かうのは、人事統轄部人財戦略部人財開発課の大城琳さん。制度設計を担った今井孝志課長と共に話を聞いた。

大城さん(左)と今井課長


 同社は、重点管理事業の一つに掲げている海外事業への対応や多角化する事業展開、さらには変化の激しい時代に適応した人財育成を目指し、JICA連携派遣を「TOCVプログラム(Toda Overseas Cooperation Volunteers)」という名称で社内制度化した。

 新たな可能性を切り開く一方で、次世代を担う“自己発働型社員”の継続的な育成を視野に入れる。

 今井課長は「入社間もない段階で、西アフリカのフランス語圏という慣れない環境に飛び込むことで、どこでも通用する人材を育てたい」と狙いを語る。

 このプログラムでは、JICAによる安全教育や語学研修などの実績あるサポート体制が受けられ、JICAの管理下で活動できるという安心材料も大きな魅力だという。

 とはいえ、建設業界でJICAの連携派遣を取り入れる例はまれであり、今井課長は「ゼネコンでは前例を聞いたことがない」と明かす。

 今回のプログラムでは、入社2、3年目の若手社員を対象に募集を行い、5人ほどが応募。その中から大城さんが選ばれた。以前から海外勤務を夢見ていた大城さんは「シンプルに、自己成長のチャンスだと思った」と参加への思いを語る。

 現地では、農業を起点とした村落開発活動に取り組む。農業の協同体制が未整備であることや、流通網の未発達による低賃金、女性の社会参加の機会不足など、多くの課題が地域には存在するという。

 大城さんは、こうした地域課題を自ら見つけ出し、PDCA(計画・実行・評価・改善)のサイクルを実践しながら、地域の活性化を図っていくことになる。

 派遣先となるザニャナド市は比較的治安が安定しているが、ベナン北部はリスクのある地域とされ、注意も必要だ。さらに、ベナン国内にJICAの隊員は多数いるものの、同市で活動する隊員は大城さんただ一人。現地の言葉でのやりとりが求められる場面も多く、未知の環境に踏み出す大きな挑戦となる。

 加えて農業経験のない大城さん。それでも、「地域課題を抽出し、その特色に即した活動をどう進めるかというプロセスを学びたい」と前を向く。さらに「活動時間以外でも、現地の方々との積極的な文化交流を図りたい」と熱意を示す。

 そして2年間の活動を通じて、「ベナンで一番有名な日本人になる」と意気込む。自らの強みであるというコミュニケーション力と、学生時代に打ち込んだサッカーやラグビーで培った突破力を武器に、日本で著名なベナン出身のゾマホン・ルフィン氏との交流にも意欲を見せる。「ただ、友人には『絶対行かない』と言われましたけど」と笑顔を交えて語る。

 ベナンやコートジボワールでの勤務経験を持つ今井課長は「アフリカの現実は、日本の想像とは異なり、この10年ほどの成長スピードは目を見張るものがある」と述べ、建設需要の将来的な拡大も見据える。大城さんにも、こうした現地の変化と成長を肌で感じてほしいと願っている。

 今後、戸田建設では制度を活用し、ベナンとセネガルに交互に若手社員を派遣する方針だ。今井課長は「課題を見つけられず2年間を過ごしてしまう隊員も少なくない」とした上で、「広い視野と視座を持ち、領域を超えて新たな価値を創出できる人材に育ってほしい」と大城さんへ期待を寄せる。

 

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