【BIM2025⑭】河村電器産業 設計支援サービス「Qrespo」で高効率化/複数社のBIMソフトとも連携 | 建設通信新聞Digital

7月6日 日曜日

B・C・I 未来図

【BIM2025⑭】河村電器産業 設計支援サービス「Qrespo」で高効率化/複数社のBIMソフトとも連携

建設業界では、各企業が業界の喫緊の課題である長時間労働の是正、生産性のさらなる向上を目指して、働き方改革やDXの推進に努めている。しかし、依然として工程・時間短縮に至っていないのが現状だ。これは電気設備設計においても例外ではない。

そうした中、河村電器産業(本社・愛知県瀬戸市、水野一隆社長)は、2024年度に約1万台生産したメイン商材のキュービクルのほか、配電盤を自動設計できる電気設備設計支援サービス『Qrespo(クレスポ)』を開発した。21年4月のサービス開始以来、会員登録数を順調に増やし、現在では約1800社、6000人以上に利用され、好評を博している。

説明する水野次長


受注改革推進部の水野敦之次長は「働き方改革やDXへの対応など、業界を取り巻く環境の変化を見据えて、リリースの5年ほど前から構想・開発を進めてきた。当社としてもDXを用いたサービスを通じて設計者と基本計画段階からつながり、建築物の情報を早めに手に入れたいという狙いがあった」と、クレスポを開発した目的を説明する。

河村電器産業は100年以上の歴史がある受配電設備企業だが、従来の営業に確認する方法だと、キュービクルのサイズや重量を知るのに1週間以上の時間を要することもあった。「建物に設置するキュービクルの位置を決めるため、設計事務所やゼネコンからサイズや重量を教えてほしいとの要望が以前から寄せられていた。クレスポを使えばトランス容量を入力するだけで、10分以内にキュービクルの図面が手に入る」(水野次長)という。キュービクルだけでなく、22年11月からは配電盤の自動設計機能も追加した。

電気設備設計のさらなる効率化に向けて、BIMと連携したサービスも始めている。24年12月には、BIMデータ(RFAファイル)が使用可能なオートデスクのBIMソフトウェアの「Revit」に、クレスポを追加設定できるインストーラーをリリースした。河村電器産業によると、入力情報を基にRFA形式でキュービクルのBIMデータを自動作図できるシステムは業界で初めて。ファイルをインストールするとクレスポがリボンタブに追加され、レビット内でクレスポにログインすれば、5分で作図できることから、これまで以上に設計時間の短縮につながる。

クレスポから出力されるRFAファイル


すでにクレスポは、四電工の「CADEWA」、NYKシステムズの「Rebro」、ダイテックの「CADWe’ll Linx」とも連携しており、それぞれの建築設備CADソフトウェアの特性を生かせる環境が整っている。

クレスポのユーザー登録者数は右肩上がりで、24年度は年間3000案件以上の登録があった。「当初は設計事務所、ゼネコンの登録が多かったが、今では設備会社、電気工事店も同じくらいの割合を占める。代理店にも徐々に広がってきている」と、水野次長は手応えを感じている。

案件一覧画面


将来の目標についてたずねると、「クレスポを社内のシステムと連携させて、設計データが製造ラインに流れるデジタルファブリケーションの世界を実現し、製造現場の生産性をいっそう向上させたい」と答えた。

その一方で、電気設備業界におけるBIMの導入は道半ばとも感じている。「キュービクルや配電盤は、ほとんどが特注品。クレスポには太陽光発電やEV(電気自動車)充電設備に対応する付加機能が備わっているが、今後は需要が高まっている蓄電池などにも対応していく必要がある。市場のニーズに遅れることなく、クレスポの機能をさらに充実させていきたい」(水野次長)と考えている。

Revitでの配置イメージ



【B・C・I 未来図】ほかの記事はこちらから



建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら