三菱倉庫は、自社保有施設・不動産を生かし、マルチテナント型物流施設の開発市場に参入する。第1弾として、神奈川県平塚市の自社倉庫を延べ約4万8000㎡の物流施設に再開発する。設計施工はナカノフドー建設が担当する。2026年夏から秋の着工、28年春から夏の竣工を目指す。今後も、全国の主要港湾周辺に保有する施設・土地でマルチテナント型物流施設の開発を検討し、「30年度までに竣工できる物件は、(平塚市の案件以外に)もう1件ほどある」(瀬ノ尾竜一不動産事業部長)としている。
同社は、1960年代の社有地開発を皮切りにオフィスビルやデータセンター、商業施設、ホテル、住宅などの開発を手掛け、2024年度の保有資産は約50棟、総延べ100万㎡となっている。オフィスが39%、商業・ホテルが53%、住宅が8%という割合で、自社利用倉庫の建て替え以外は物流施設の開発を手掛けてこなかった。2月に発表した25年度から30年度までのグループ経営計画では、資産回転型ビジネスを展開する方針を示し、期間中に総額5900億円をDX(デジタルトランスフォーメーション)・更新・成長投資に充てる方針を示した。このうち、資産回転型の不動産事業には1150億円を充てる計画だ。
マルチテナント型物流施設の開発について斉藤秀親社長は「不動産と物流の両事業のシナジーを発揮し、三菱倉庫らしい価値を創出したい」とコメント。東京、横浜、名古屋、大阪、神戸、福岡といった大規模港湾周辺に土地・施設を保有しているが、「老朽化している施設が多く、スクラップアンドビルドや売却も含め、所有地の特性に合わせて開発内容を検討する」(瀬ノ尾部長)としている。
物流不動産開発市場は、近年の供給過剰によって、賃料が上がらない一方、建築費が高騰して採算が確保しづらい環境が続いているものの、「土地を新たに取得する必要がなく、商品としての強みを出せる」(同)と強調する。それでも、建築費の高騰は大きな課題で、「平塚市の案件は、何とか工事費に見合う施設ができたが、今後はどこまで採算に見合う施設ができるかは不透明」(同)としている。
平塚市の案件は、「(仮称)厚木プロジェクト」で、東海道新幹線で新駅を誘致する寒川町倉見地区に近い「ツインシティ大神地区」内に保有している敷地2万1000㎡、総延べ1万7000㎡の施設群を再開発する。開発後の施設規模は、S造4階建て延べ4万8400㎡となる。設計施工費は約132億円。賃貸倉庫面積4万2000㎡、事務所2260平方mで、8区画を用意する。リーシングの状況によっては自社利用も検討する。
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