【日事連和歌山大会】都市木造・建築防火・保存改修など「木」との新たな付き合い方を議論 | 建設通信新聞Digital

4月26日 金曜日

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【日事連和歌山大会】都市木造・建築防火・保存改修など「木」との新たな付き合い方を議論

 “紀の国”で木を語る--。日本建築士事務所協会連合会(大内達史会長)の第41回建築士事務所全国大会和歌山大会のメインシンポジウムは、県土の8割以上を山地が占める自然豊かな“木の国”和歌山で、地域の歴史・文化・自然に裏打ちされた伝統的な木造建築の保存改修、耐火木造やCLT(直交集成板)など最新の木造建築技術の動向を踏まえて、日本の伝統的な建築技術を支えてきた木との新たな付き合い方を探る議論が展開された。
 建築家・建築史家の藤森照信江戸東京博物館長による基調講演「歴史と文化と自然を活かした建築」を踏まえたパネルディスカッションでは、コーディネーターの原田浩司氏(木構造振興客員研究員、ウッドストック主宰)が「いろいろな木材」「非住宅」をキーワードに挙げた。
 本多友常摂南大特任教授(本多環境・建築設計事務所)は、国内最大級の木造小学校・高野口小学校(和歌山県橋本市)の保存改修事業を紹介。改修後に国から重要文化財の指定を受けたことで「住民主体の継承という名の創造行為が公的に認知された。地域の誇りとして刻印され、価値を高めている」と、解体中止運動から10年以上にわたる事業の成果を振り返った。
 木を新たな素材ととらえて木造の新たな可能性を探る“都市木造”の実現を目指している腰原幹雄東大教授は、最近の木造建築を取り巻く状況を「木造推進の方策に、ようやく技術が追いついてきた。さらに需要を伸ばすためには都市部の木造化が不可欠だ」と強調した。その一方で「主伐材よりも間伐材の利用が進んだことで、弊害も起きている」と指摘し、木材のさまざまな利用方法が必要との考えを示した。
 早大招聘研究員として建築防火を研究している安井昇桜設計集団代表は「燃えるという木材の弱点を長所に転換することで木の復権を図りたい」とした。特に都市の密集地では「“燃え抜けない・壊れない”時間が重要であり、木材を太く厚く使うこと」が新たな可能性につながると指摘し、「木育に加えて“火育”を通じて、木に対する誤解を解きたい」と力を込めた。
 藤森氏は、「木は身体の延長上にある一番身近な素材だ。世界でも自由に木が使える国や地域は少なく、もっと評価されるべきだ」と、木造建築に再び目を向けることの重要性を説いた。

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