【本】身近な存在をもっと知ってほしい!『模型で分かるドボクの秘密』著者・藤井俊逸氏に聞く | 建設通信新聞Digital

5月18日 土曜日

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【本】身近な存在をもっと知ってほしい!『模型で分かるドボクの秘密』著者・藤井俊逸氏に聞く

藤井基礎設計事務所代表取締役社長 藤井俊逸さん

 土木は身近な存在なのに意外に知られていないし、分からないから人気がないのが現状である。高速道路を走っていると山の斜面(法面)などに「×」マークの構造物を見かける人は多いだろう。しかし、なぜ必要なのか、どういった役割があるのか、一般の人はほとんど知らない。
 筆者の藤井俊逸さんは、「とにかく土木を身近に感じてほしい」と訴える。「×」はグラウンドアンカー工法を施工した個所で、法面の崩落を防ぐ重要な役割を担っている。「×」の中心部には、法面に直交して鉄のワイヤーが埋め込まれ、地面が動いて崩れないようにしているのだ。また、トンネルの壁面はなぜ丸いのか考えたことはあるだろうか。実は、壁面が丸いことで強度が増すのだ(アーチング効果)。そういった身近にあるけれど意外に知らない土木の不思議を、平易に理解してもらうために登場したのが本書となる。
 模型制作で使う材料は100円均一で売っている商品など、身近で簡単に手に入るものだ。土木施設の役割を単純化することで、楽しく作れて、理解しやすい模型となる。そもそも藤井さんは大学卒業後、コンサルタント会社に就職し、発注者に分かりやすく説明するために模型を作ったそう。また、地元説明会などでも、百聞は一見にしかずということで、模型を使って説明したところ、評判がよかったという。説明のたびに作った模型の数は、いまでは大きいもので60個、小さいものを入れると数え切れない。
 「模型を使うことで理屈や仕組みを理解してもらえる」と話す。高等専門学校で授業をしたところ、学生から「計算だけだと分からなかったけれど、模型の説明でピンと来た」と言われたそう。物事には理屈があって成り立っていることを、「実際に見てさわって体験することで理解できるもの」と語る。さらに、土木は土質力学や構造力学、水理学、地質学などの学問の上に成り立っていることを知ってもらう良い機会ともなる。
 藤井さんは「防災展などで一般の方たち向けに見せると意外と50歳以上の男性が声を出して喜んでくれる」という。また、「小学生は目をきらきらさせてのぞき込んでくる」とも。山が崩れる理由をしっかり理解することで、いざという時の防災対策につながるという効果もある。
 本書は地盤関連を中心に12編で構成されている。いま、日経コンストラクション「ドボク模型プレゼン講座第II」で新たな模型づくりを不定期で連載している。今後について藤井さんは、「土木工事の住民説明会で模型をつくって説明する人を育成したい」と語る。模型を使って土木を分かりやすく伝えることが、未来の理工系に進学する子どもたちの礎となるかもしれない。

『模型で分かるドボクの秘密』日経コンストラクション編 3000円+税
 100円ショップなどで簡単に手に入る身近な素材で模型を作り、土木の基本を楽しみながら理解できる。実験および模型の作り方を映像で紹介するDVDと、映像の構成に合わせ豊富な写真で詳細を解説した書籍となっており、教育用コンテンツとして最適な1冊だ。また、若手土木技術者および土木系学生の教育用コンテンツとしても最適だ。模型実験は、公共インフラ整備の事業者が一般市民向けに土木技術の意義をPRする際のプレゼンテーション手法としても活用できる。

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