【本】婦人雑誌で掲載された斜面崩壊現場ルポが探求に誘う 新潟県土木部・永田氏の一冊 | 建設通信新聞Digital

5月6日 月曜日

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【本】婦人雑誌で掲載された斜面崩壊現場ルポが探求に誘う 新潟県土木部・永田氏の一冊

『崩れ』(講談社文庫、430円+税)
 年を取るとだんだん出不精になるが、興味のあること(筆者は「物の種」と呼んでいる)について現地に行って見て感じて、知ることは楽しいと教えてくれる本である。
 70歳を超えた幸田文さんが、偶然静岡県安倍川上流の大崩壊(大谷崩れ)を目にし、斜面の崩壊に興味を持ち、全国各地の崩壊現場を回った紀行文で、婦人雑誌の『婦人之友』に連載された文章をまとめたものです。
 自然災害に関しての本では、学術的で無機質な色合いになるところ、特に婦人雑誌に不似合いな「崩壊」「地すべり」などの言葉が多く出てくるが、筆者の女性目線の優しい表現で、みずみずしく書かれており、つい各地の現場に引き込まれていく内容である。筆者が父幸田露伴の死後、日常生活の中での出来事などを多く書かれているものと同じように温かみと爽やかさを感じる表現がちりばめられている本である。
 崩壊巡りの契機となった静岡市の大谷崩れは、以前私も携わったことがあり、この本の文学碑があります。
 皆さまも本を片手に探求に出かけてみませんか!
(新潟県土木部都市局長 永田雅一)

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