【奈良ホテル改修】木造のしなやかさ生かす「複層斜交重ね板壁」を採用 松野浩一教授ら開発 | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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【奈良ホテル改修】木造のしなやかさ生かす「複層斜交重ね板壁」を採用 松野浩一教授ら開発

辰野金吾が設計した和洋折衷様式の建物で「関西の迎賓館」とも呼ばれる奈良ホテル

 辰野金吾が設計したことで知られる奈良ホテル本館で、2017年5月から耐震改修工事が進められている。外観を保存する観点から、改修には松野浩一東洋大教授が中心となって考案した「複層斜交重ね板壁」が採用された。同板壁を大規模木造建築に適用した国内初の事例という。改修設計はジェイアール西日本コンサルタンツと能勢建築構造研究所、施工は大鉄工業が担当している。
 28日、現地で報道陣や建築関係者向けに工事説明会が開かれた。工事は建築物耐震改修促進法に伴うもので、奈良ホテルによると創業以来初の大規模な耐震改修工事という。2014年に耐震診断、16年に耐震改修設計を実施した。当初は仕口補強リングやダンパーなどによる補強を検討したが、建物の外観をできるだけ損なわない耐震改修方法として、複層斜交重ね板壁が採用された。

説明する松野教授

 同板壁は小幅板を実矧(さねは)ぎで継ぎ、2種類の斜め板と横板の3層に重ねることで壁構面を構築する。無垢材のみを使い、組み立ては簡易。接着剤を使わずビスのみで接合する点も特徴だ。日本建築総合試験所の「既存建築物耐震診断等判定委員会」で耐震性を評価、限界耐力計算により十分な耐震性能が確保できていることも確認済み。「伝統構法のしなやかさを生かすために強さと硬さ、粘り強さをバランス良く備えた耐力壁」(松野教授)を実現している。
 ジェイアール西日本コンサルタンツの戸田充建築設計部構造設計室次長によると、ダンパーなどの工業化製品よりも補強個所が少なく、全体工事費の削減も期待できるという。20年3月の工事完了を目指している。
 奈良市高畑町にある奈良ホテル本館の規模は、木造2階建て延べ約4600㎡。1909(明治42)年に完成した。辰野金吾が設計した和洋折衷様式の建物で、著名人も数多く逗留したことから、「関西の迎賓館」とも呼ばれる。

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