西武ホールディングスが東京都豊島区の西武鉄道池袋旧本社ビル跡地で建設を進めている(仮称)西武鉄道池袋ビル新築工事の全体が見えてきた。西武鉄道池袋線の線路上空も活用して建設が進む延べ約5万㎡のオフィスビルは、池袋エリアでトップクラスの総貸室面積を持ち、低層部には商業施設を設け、地域のにぎわいを創出する。設計・監理を日建設計が担当。大林組・西武建設JVの施工で、2019年3月の竣工、同年春の開業を目指す。総事業費は約380億円。
施工上の制約が厳しく難易度が高いのが、線路上空の工事。大林組JVの石川郁男所長は「2階レベルに構築した人工地盤の工事は、1日のうち終電から始発までの夜間でき電停止など3時間半ほどの間に行った。線路上空の工事は半年ほどかかった」と説明。「現在、工事は計画どおり進んでいる」と言う。
また、大型オフィスに求められているものの1つが高い耐震性。「V字の太い柱で組んでいる『低層』が耐震構造になっている。3、4階の間には中間免震層を設けている。4階から上は免震の建物になる」(岡田耕治日建設計設計部門設計部長)。
オフィスフロアは、基準階貸室面積が約2100㎡。「無柱の広く快適なオフィス空間を提供する」(西武プロパティーズ)。この整形無柱空間を可能にしたのが、機能性を備えた『ブレース』架構。「鉄道のダイヤグラムをイメージさせる特徴的なデザインに包まれた外観は、デザインと機能性を兼ね備えている」(同)。
また、フロアの小割などフレキシブルな対応もできる。西武ホールディングス、プリンスホテル、西武プロパティーズの本社として、5フロアを使用する予定だ。
防災・BCP(事業継続計画)や環境・景観への対応も大きな特徴だ。大地震時にも建物の機能を維持するため、中間免震構造を始め、ビル内に防災備蓄倉庫を設けるほか、エントランスホールやビル内デッキなどを帰宅困難者の1次滞在スペースなどに開放する。72時間非常用発電機と入居者用の非常用電源スペースを確保してBCPをサポートする。災害時に備え、3日分の使用水量を常時確保し、排水も建物内に貯留できる計画だ。屋外には帰宅困難者用にマンホールトイレも設置する。
ビル内デッキによって、敷地周辺の東西・南北をバリアフリー化した動線を新設する。また、敷地内の空き地を積極的に緑化するなど、地域に憩いの場を提供するとともに、潤いのある景観形成やヒートアイランド対策に貢献する。ウォールスルーユニットによる自然通風、Low-E(低放射)ガラス、LED照明の採用など省エネ化する。
西武ホールディングスの後藤高志社長は「池袋は西武鉄道最大のターミナル駅であり、副都心としても発展が期待できる。戦略上でも最重要エリアに位置付けている」と強調。来春の新たなランドマーク完成によって「西武グループの中枢各社の本社が移ってくる。今後は東西デッキも計画されている。企業価値の向上とともに、池袋エリアの発展・活性化に貢献できる」と期待感を示している。
池袋駅東西連絡通路(東西デッキ)整備
豊島区が計画している東西デッキは、池袋駅線路上空に「南デッキ」「北デッキ」の2つのデッキからなる。南デッキは、西口のメトロポリタンプラザビルと西武百貨店を接続し、さらに建設中の(仮称)西武鉄道池袋ビルを結ぶ位置に整備する。北デッキは、メトロポリタンプラザビルを除く東武百貨店エリアを含めた池袋駅西口駅前街区まちづくり事業などとの関連について関係事業者と協議を進め、駅地下通路の改善を一体的に検討する。
さらに、東西デッキの整備によって、駅の改善を進め、駅周辺の都市整備プロジェクトへ連鎖的につなげる。