【鹿島のサンゴ礁再生】上空と水中を水面浮体型ドローンでモニタリング! 人工基盤の最適設置に | 建設通信新聞Digital

5月10日 金曜日

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【鹿島のサンゴ礁再生】上空と水中を水面浮体型ドローンでモニタリング! 人工基盤の最適設置に

 鹿島のサンゴ礁再生への取り組みが着実に進んでいる。沖縄県慶良間諸島海域では、独自開発の人工基盤「コーラルネット」を活用してサンゴ再生に向けた環境保全活動を展開するなど、地元と連携した取り組みが広がっている。同社地球環境・バイオグループ長の越川義功氏は「施工者として工事前のモニタリングも重要」と、そのツールとして水面浮体型ドローンを開発し、真正面からサンゴ礁再生と向き合っている。

サンゴが再生された人工基盤『コーラルネット』

 同社は20年前から沿岸環境の保全や評価技術の開発に乗り出してきた。その対象は干潟やアマモ場など幅広い。サンゴ礁の再生に向けた技術開発をスタートさせたのは10年ほど前。那覇港内ではサンゴの生息量が少ないことから、コーラルネットを設置し、生息状況を把握するなどの実証実験に着手したのが始まりだ。
 沿岸浅海域のサンゴ礁を守るためには高水温などによる白化現象やオニヒトデの大量発生、赤土流出などへの対応が求められ、台風の襲来にも対策を打つ必要がある。そこで考案したのが、網状構造のコーラルネットだった。波や水の流れ、光も通りやすく、土の細粒分など水中の微細な粒子が基盤上にたまらないため、サンゴの幼生が着床しやすく、成長を妨げない。ネットは耐久性重視のステンレス製と、自然分解して環境への影響が小さい酸化分解樹脂製の2種類がある。
 そもそもサンゴ礁のモニタリングはダイバーによる観察や写真撮影が一般的だが、波などの気象条件に左右されるため、広範囲の調査には時間がかかっていた。さらに沿岸には岩礁などの障害物が多く、船では調査地点に近づくことが難しい場合もある。同社はプロドローン(名古屋市)に製作を依頼し、上空と水中の両方を撮影可能なドローン『SWANS(スワンズ)』を開発した。

モニタリング用に開発した水面浮体型ドローン『スワンズ』

 「サンゴ礁再生の計画立案には欠かせない」と地球環境・バイオグループ主任研究員の山木克則氏は力を込める。特に保全計画ではコーラルネットの最適な設置が不可欠であり、そのツールとしてスワンズの存在は大きい。白化現象は上空からであれば判断しやすい。ただ、白化してから数週間後にはサンゴの周りに藻などが付き、空からではわかりにくい。そういうケースでは着水し、水中カメラで確かめることも可能だ。そうなればオニヒトデの襲来にも迅速に対応できる。
 スワンズは、機体のローター部4カ所と中央部に浮力を持たせ、着水時の安定性を高めており、機体下部のドームポート内に搭載したカメラで上空からの俯瞰(ふかん)映像や水中の映像を撮影し、GPS(全地球測位システム)による位置情報をリアルタイムに伝送・記録する。超音波センサーを搭載しているため、サンゴの成育評価に必要な水深や海水温の計測も可能だ。
 20分の飛行時間で2500㎡ものモニタリングデータを取得でき、慶良間諸島海域で進める環境保全に試験適用し、成果は確認済み。他の地域から導入ニーズがあることから、2号機の開発も検討している。スワンズの調査手法ではGPSによる位置情報の活用により、人力で海底に設置する潜水作業が不要となるため、調査の時間も大幅に短縮できる。

スワンズ着水後の水中画像

 サンゴの海底マップ製作が実現すれば、コーラルネットの効果的な配置計画を導き出せる。同社は撮影映像と追加搭載する各種センサーから得られるデータを用いた海底地形の3次元化や水質、流速などの海洋観測技術への対応についても検討する。
 同社は環境省から『国際サンゴ礁年2018』のオフィシャルスポンサーとして任命された。建設業では同社とアジア航測の2社。国際機関の国際サンゴ礁イニシアティブ(ICRI)が、2018年を「国際サンゴ礁年」に定めるとともに、環境省はサンゴ礁生態系保全行動計画の中間報告をまとめる。サンゴ礁の生態系保存については節目の年であるだけに、同社はサンゴ礁再生に向けた技術開発に本腰を入れようとしている。

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