【追従運搬ロボット】誰でもすぐに使えるロボット「THOUZER」の展望は Doog社長 大島章氏に聞く | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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【追従運搬ロボット】誰でもすぐに使えるロボット「THOUZER」の展望は Doog社長 大島章氏に聞く

 現場で誰でも直ぐに使ってもらえるロボット--。そんなコンセプトで、人の後を忠実についてくる「追従運搬ロボット」を開発した茨城県つくば市のベンチャー企業、Doogの大島章社長は、主力のこのロボットの品質確保と維持管理、機能向上のため、「やることはたくさん見えている。重要なことから一歩ずつ進めている」と技術開発を継続することの重要性を指摘する。2015年の販売開始以来、物流分野・製造分野を中心に約200台を販売し、まだ導入実績のない建設分野にも意欲を示す。「自動化をしづらい建設現場でこそ、カスタマイズできるわたしたちのロボットの可能性はとても大きいと思っています」。大島社長に現状と展望を聞いた。

◇大型使役犬並みの能力と従順さ

 開発した追従運搬ロボットの名称は、「サウザー(THOUZER)」。発音が近い「ジャイアントシュナウザー」のような大型使役犬並みの能力と従順さをと名付けられた。
 ロボットは、人や台車など先導する対象をレーザーセンサーで区別する「自動追従」がベースだが、反射テープのラインを検出する「無人ライン走行」にも対応し、2通りの使い方ができるほか、ジョイスティックでの操作も可能である。搬送作業に専従者が不可欠だったり、既設設備の活用や作業工程を大幅に変えずに生産性を上げたいなど、これまで電動化・自動化が難しかった現場で効果を上げている。
 サウザーは、労働安全衛生規則で定められている幅80cmの直進路を通過でき、幅100cmの直角路でも滑らかに曲がることができる。無人ライン走行は、簡単に敷設・撤去できる再帰反射素材(テープなど)のラインに沿って走行し、障害物を検出して停止、警告音を鳴らせる。自動追従、無人ライン走行ともに屋外の建屋間の移動、スロープや凹凸路にも対応している。レーザーセンサー活用なので、昼夜を問わず性能を発揮し、既存台車をけん引することもできる。
 大島社長は、大学でロボットのシステム全般を勉強し、大手民間企業入社後もロボット開発に携わった。FA(ファクトリー・オートメーション)ではない定型化しづらい現場へのロボット導入を考え続け、2012年独立、会社「Doog」を設立した。

Doog社長 大島 章氏

 サウザー開発の経緯をこう話す。
 「会社設立当時は、センサーで追従するロボット『カルガモ隊』をつくったが、費用対効果の面で現場で使える産業用は開発していなかった。最初はアミューズメントやイベント業界とのつながりが強く、その一環で14年ころにサウザーの前身といえる自動運転の2人用の乗り物『モビリス』をつくった。移動販売や移動エンターテインメントでのニーズに応えたものだ。この発表によって、物流業界、製造業界、建設業界などから問い合わせをいただくようになった」

◇過酷な環境への対応が課題
 建設業界の問い合わせからはポテンシャルの高さと同時に課題も見えてきた。
 「現在の仕様では積載荷重が最大120㎏だが、建設業界からはまず、もっと大きくて重たいものを運びたいという要望があった。これは予想はしていた。それと現状では砂利道など多少の凹凸は対応可能だが、過酷な環境への対応も考えなければならないということ。最も多く導入されている物流分野は、倉庫や工場などでも床がフラットで適応しやすい。設備などを変えなくても良いので導入が進んだ」
 「ただ、誰でもどこでも使えるという、わたしたちの最大のコンセプトから言えば、定型化されていない建設現場では高いポテンシャルがあるのではないかと思っている。建設現場は広く、人が持てないような重いものを運ぶ場面が多いという点から、サウザーを大いに活用していただきたい。大型機をリリースし建設現場などでの利用を提案したい。建設現場でこのポイントを押さえると使えるのではないかなど、代理店とともにロボットの改善に役立てたい」

荷物の運搬で自動追従するサウザー


◇のりしろ残したベースロボット
 会社の考え方としては、サウザーはあくまでベースのロボットという位置付けだ。
 「代理店の情報を基にお客さまと一緒に、現場に合った使いやすい形にカスタマイズしていくことが、わたしたちが最も大切にしていること。のりしろを残したロボットといえる。例えば、スマートフォンを使った操作も考えられるが、現場によっては移動が数カ所で固定している場合は、ボタンのリモコンのようなものの方が簡単になるなど、いくつかのオプションを用意すれば良いかと思っている」
 最近、海外からのオファーも入ってきて、特にシンガポールでは日本にはない場面でも活用されている。
 「空港が中心で、グランドハングリングの会社から仕事を受注して、空港内の飲食物運搬など、貴重な仕事をさせていただいている」
 シンガポールでは、政策として移民から自国の労働者の活用にシフトをしており、ロボット利用や自動化が進んでいるのだという。

◇ラインアップとカスタマイズ増やす
 課題についてはこう述べる。
 「ベースロボットのラインアップがもっと必要ではないかと思っている。ラインアップが増えればひも付くカスタマイズも増える。毎日一歩ずつの技術開発だが、改善とともに新たなロボットの開発も進めていく。販売が増えていく中で、やることがたくさん見えてきている。着実に成果を出していく中で大事なことは、納めたロボットが安定した品質で確実にお客さまに使っていただけること。この原則は忘れないようにしたい」

◆プロフィル(おおしま・あきら)北海道出身。2009年に筑波大学システム情報工学研究科を修了し、日立製作所に入社。12年に株式会社Doogを設立

◆社名「Doog」について
(1)Doog→道具=道具として役立つものを真摯に考える
(2)Doog→Good=高い技術水準の追求により優れた性能を実現する
(3)Doog→Dog=人の意思を尊重して従順に働く機器を開発する

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