【建築職能の可能性】建築的考え方が求められる時代 東北大で阿部仁史、五十嵐太郎両氏 | 建設通信新聞Digital

4月30日 火曜日

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【建築職能の可能性】建築的考え方が求められる時代 東北大で阿部仁史、五十嵐太郎両氏

 仙台の学生有志で構成する仙台建築都市学生会議(遠藤空瑠代表)は2日、阿部仁史アトリエと東北大大学院工学研究科の協力を得て、仙台市内の東北大CLTセミナールームで2018年度ハウス・レクチャーを開いた=写真。同アトリエ主宰の阿部仁史氏(UCLA教授)と、同大学院の五十嵐太郎教授が対談し、建築を学ぶ学生の傾向やあり方などについて意見を交えた。
 冒頭、両者はこれまでの接点・交流の経緯や担当してきた建築プロジェクトなどを紹介。この中で、阿部氏はUCLAテラサキリサーチセンターの多目的施設やオーストリアの首都・ウィーンに計画中のウィーン経済・経営大学新キャンパスなどについて説明した。
 このうち、多目的施設はファサードに面した書店と読書スペースを含む幅の広い通路が建物の全体を貫き、その上部に吹き抜け空間を備える。吹き抜けの天井は半透明の膜屋根で覆われており、中央には中心の穴を通して空が見える鏡面仕上げのスピンドル状のオブジェを設置。膜屋根を通した自然光が窓のない空間内に柔らかく分散し、オブジェで乱反射した光が水底を照らすように工夫した点などを解説した。
 また、教授として学生を指導する立場から、「建築を学ぶ学生は、要求を実現する過程で矛盾する空間づくりとリアリティーへの整合性、ジェネラリスト、3項目からなる“建築的な考え方”を修得している」とし、「この考え方はさまざまな応用が利く思考のあり方だ。シンパシー能力も優れている」と強調。これに五十嵐教授も賛同した。
 さらに、阿部氏は「UCLAで建築を学ぶ学生は映画の世界で引っ張りだこになっている」と説明。その上で「設計を手掛ける建築家は花形職業に感じると思うが、建築家以外にもさまざまな道が開かれている。建築の職能のあり方に縛られないでほしい」と呼び掛けた。

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