【防災・減災、国土強靱化シンポ】近畿建設協会ら 事前対策の重要性について議論を交わす | 建設通信新聞Digital

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【防災・減災、国土強靱化シンポ】近畿建設協会ら 事前対策の重要性について議論を交わす

 近畿建設協会と河川情報センター、建設コンサルタンツ協会近畿支部、関西地質調査業協会は9日、大阪市のドーンセンターでシンポジウム「防災・減災、国土強靱化の推進に向けて」を開いた。国土強靱化の取り組みについて講演があったほか、平成の災害を振り返り、災害対応を考えるパネルディスカッションを行った。
 冒頭、霜上民生近畿建設協会理事長は「災害は避けて通れない。いかに対応するかが重要だ。治水対策はいまに始まったことではなく、太古の昔から日本では進められてきた。若い人にも防災・減災の重要性を広めたい」とあいさつした。

霜上理事長

 山田邦博内閣官房国土強靱化推進室次長は「国土強靱化に向けた最近の取組について」をテーマに基調講演した。
 山田次長は国が進める「国土強靱化基本計画」や「防災・減災、国土強靱化対策のための3カ年緊急対策」の成り立ち、現状の取り組みについて説明。過去の伊勢湾台風や阪神・淡路大震災、東日本大震災を教訓に、災害対応の考え方が進化してきたことを解説し、「災害が起こる前から備え、被害を減らし、早期に復興できる社会を目指す。国と地方公共団体、民間が一体となって取り組み、事前にどうすれば良いのか考えることで、強くてしなやかな国にしなければならない」と力を込めた。

山田次長

 パネルディスカッションでは佐藤泰博産経新聞社大阪本社編集企画室長をコーディネーターに、越智繁雄河川情報センター業務執行理事と黒川純一良近畿地方整備局長、阪本真由美兵庫県立大大学院減災復興政策研究科准教授、中貝宗浩豊岡市長をパネリストに迎えた。「平成30年度災害を振り返り―防災、減災の新たなステージへ―」と題し、平成の30年間に起きた災害を振り返りながら、災害に対して社会が備えるべき対策について議論した。
 越智理事は「個々の施設や取り組んできたことが連携することで意味がある。代替性を持ち、壊滅的破壊に至らず、粘り強く、柔軟で安全・安心を与えてくれる『幅をもった』社会システムの構築が必要だ」と訴えた。
 阪本准教授は2018年7月豪雨で避難しなかった住民が多数いたことについて地域の力が落ちていることを指摘。地域力の向上には「地域の住民同士や地域と企業間のコミュニケーションが重要となる。地域が自ら力をつけなければならない」と語った。
 黒川局長は東日本大震災で岩手県普代村を津波から守った普代水門を紹介し、「水門建設前には高さ15.5m、長さ200mの大型水門は不要だとバッシングを受けた。しかし、当時の村長は1896年に起こった明治三陸沖地震の津波で被害を受けたことを説明し、大型水門が必要だと訴えた。その結果、東日本大震災では水門が決壊せず、村を救った」とハード整備の重要性を述べた。
 中貝市長は自らが発起人となり立ち上げた水害の被害を受けた首長らが参加し、経験や教訓を発信する「水害サミット」で策定した「災害時にトップがなすべきこと」を説明した。「空振りであっても避難勧告は躊躇(ちゅうちょ)してはならない。たとえ避難勧告を出しても自分は大丈夫という正常化バイアスがかかり、住民は避難しない。住民を避難させる技術を身につけることが重要だ」と語った。

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