【土佐工業・座談会】けんせつ姫・女性技能者や経営者 生の声を行政に 女性が仕事を続けるには? | 建設通信新聞Digital

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【土佐工業・座談会】けんせつ姫・女性技能者や経営者 生の声を行政に 女性が仕事を続けるには?

 千葉県船橋市の建設企業、土佐工業(柴田久恵社長)は4月19日、建設現場で輝く女性技術者・技能者などを取り上げるフリーペーパー『けんせつ姫』に掲載した女性技術者・技能者や、国土交通省の幹部らを招いて座談会を開き、建設業界で働く女性の現状について意見を交換した。
 『けんせつ姫』は、柴田氏が編集長を務めており、日本タウン誌・フリーペーパー大賞2018の企業誌部門最優秀賞を受賞した。2020年2月に、第3号の全国配布を予定する。
 座談会冒頭のあいさつで柴田氏は、「『けんせつ姫』の発行によって、建設業界が男女お互いの長所を生かせる業界となるための情報が広まり、また学生に建設業界で働く人の姿をアピールして入職者が増えるきっかけになればと思う。座談会には、中小企業の女性技能者や経営者を集めたので、彼女ら現場の声を行政などへ届ける機会としたい」と述べた。

立って発言する柴田編集長

 座談会では「仕事を続けるため、子育てとの両立などで工夫していること」「女性技能者であることが仕事上で役に立った場面」「現場であったらよいと思うもの」をテーマに、意見交換した。
 「仕事を続けるため、子育てとの両立などで工夫していること」について、クリエすずき建設(柏市)で現場監督を務める佐々木真梨恵氏は「子どもが2人いるが、会社の人に代わりに保育園のお迎えに行ってもらうなど、会社ぐるみで子育てを支えてもらっているので、なんとかやっていけている」と語る。会社のほか、夫や親戚など周囲の人の理解や協力が必要との声が多数上がった。
 田丸興業(船橋市)の現場監督・田丸綾子氏は「自分は夫の父親が社長であったため、子どもの授業参観などに参加する際に融通をきかせてもらっていた。子どもの用事の際に大いばりして休める環境があれば、女性は建設業にやってくると思う」と述べ、賛同を集めた。
 「女性技能者であることが仕事上で役に立った場面」について、星工務店(東京都目黒区)の型枠大工である城戸帆乃香氏は「現場で働く男性の技能者と、事務作業を行う女性社員の間で意思疎通が十分でない場面がある。現場の要望を事務方に伝える際などに、間に立って話をすることが多い」と調整役として求められることを挙げた。
 そのほか、ハルク(鎌ケ谷市)でインテリアコーディネートなどを担当する佐々木えみ子氏は「顧客が夫婦の時、男性だけでは家について奥さんの要望を聞いても理解できていないケースが見られるので、同席して補足をする」と語った。社内外を問わず、女性とのコミュニケーションについて、女性の視点・感覚を持った技能者がいることでスムーズに進むという意見が寄せられた。
 「現場であったらよいと思うもの」については、女性用トイレが話題の中心となった。「十分な広さの女性用トイレが1つあれば、生理用品の処理や着替えスペースなど、現場で女性が困る点がいくつも解決する」との声が出た一方、経営者側の視点では「小規模な現場では、トイレを置くスペースの捻出に苦労する」という実情が指摘された。
 柴田氏は「女性であっても、10年以上も現場で働いていると、ものがない状況に慣れて、若いころの感覚を忘れてしまう。若い女性に魅力を感じて入職してもらえる現場にするには、若い女性技能者の声が必要」とコメントした。
 国土交通省から参加した渡邊広樹建設産業局建設市場整備課主査は「国交省は2014年に、『もっと女性が活躍できる建設業行動計画』を策定し、建設業にどんどん女性が来てほしいという姿勢を世の中に示しているが、まだ道半ばであり、現在は新しい計画の策定段階に入っている。この策定を含め、座談会の意見を今後の政策に役立てたい」とした。

座談会後の記念写真

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